賄賂-14
次の日、長四郎達は変蛇内高校にその身を置いていた。
「ねぇ、なんで学校なの?」燐がそう質問すると「話を聞きたい人がいるから」と答えた。
その話を聞きたい人とは、稲垣久子であった。
「すいませんね。授業中、呼び出しちゃって」長四郎の第一声はそれであった。
「いえ。私に聞きたいことって何でしょうか?」
「担当直入に聞きます。門口早苗さんはご存知でしょうか?」
「殺されたPTA役員の方ですよね? そのぐらいしか分からないですね」
「噓は言ってないと思うよ」燐は長四郎に耳打ちする。
「じゃあ、質問を変えます。ご面識は?」
「ありませんよ。何です? 私が殺したみたい」
「どうして、そう思うんですか? 誰も貴方が殺したなんて言ってないでしょ」
「そ、それは疑ってかかるような質問をするからです!!」久子は長四郎を怒鳴りつける。
「神経を逆なでる性分なもので、気を悪くしたのなら謝ります。ごめんなさい」
長四郎は形だけの謝罪をする。
「心無い謝罪なら、結構です」
「だってよ。ラモちゃん」
「あんたに向かって言っているのよ」
「お、そうか」
「あの、もう宜しいでしょうか? 授業に戻りたいんですけど」
「その前に、これだけ、これだけ教えてください。これに、見覚えないですか?」
長四郎は黒革の手帳を久子に見せると、久子は目を見開いて驚いたような顔をした後、「し、知りません」とだけ答えて授業に戻っていった。
「怪しいな・・・・・・」
「でも、私が話を聞きにいった時はそんなことないし」
「絶対って言えるか?」
「言える!!」燐は毅然と断言した。
一方、命捜班の刑事達はというと・・・・・・
“ここに張り込んで何が分かるのか?”
明野巡査と遊原巡査の二人は、そう考えていた。
二人は今、PTA役員の河合香織を張っていた。
「今日で二日目。ホントにあのおばさんが犯人なのか?」遊原巡査は退屈そうに明野巡査に話しかける。
「でも、班長があの河合香織って人を追えって言うから」
「そうだけど。な、あのおっさんが何考えているのか、分かんなさすぎて」
「信じられないって事?」
「泉はどう思うんだよ? 信じられるのか?」
「信じられるよ。てか、信じるしかないじゃん。私たちの上司をさ」
「お前は良い奴だよ」
「ありがとう」明野巡査が礼を述べてると河合香織が動き出した。
「お、出かけるみたいだな」遊原巡査は身を乗り出して尾行の準備に取り掛かる。
「祐希、尾行は慎重にね」
「分かってるよ。じゃ、行ってくる」
張り込み用の車を降車した遊原巡査は、河合香織の尾行を開始した。
そして、河合香織を尾行していくと行き着いた先はなんと稲垣暁美の会社であった。
「おいおい、マジか」呆気に取られていると楽しく談笑しながら、暁美と河合香織が会社から出てきた。
河合香織の手には先程までなかった紙袋が握られていた。