賄賂-13
「だから、俺は殺してないって」
そう答えるのは、マンションの管理人の赤柳 嘉彦。
「じゃ、目撃証言はどうだというんだ?」
マンションの住人から、赤柳と門口早苗が口論している所を目撃されタレコミされたの
だ。
「知らないですよ。そんなの」
「時間はたっぷりあるんだ。覚悟しとけよぉ~」
そう取り調べを担当する刑事は赤柳に向かって言うのだった。
「可哀想ですね」
取調室の小窓から覗き込む遊原巡査の感想それであった。
「可哀想だね」と佐藤田警部補は適当に相槌を打つ。
「班長はあの人が犯人だと思ってます?」
「思ってない。ああ、そうだ。明野に頼み事してるから明野と合流して頂戴」
そう遊原巡査に指示を出して、自分は命捜班の部屋へと帰っていった。
「ホント、掴めない人だな」遊原巡査ははぁ~ っと、ため息をついて明野巡査の元へと向
かった。
そんな事、つゆ知らずな長四郎達はというと・・・・・・
「で、どう?」
リリは長四郎が持ってきた黒革の手帳と睨めっこする燐に尋ねる。
「うん、ここに金の流れが書いてある。けど」
「けど?」
「そこまでしかない。金額の詳細とかはないね」
「どういう金の流れなの?」
「それは、こういう事」
PTAの会費を多めに徴収 → 帳簿上では以前の値段で記載 → その差額分をキックバッ
ク
「て、事なのよ」
「じゃあ、運営費は変わらないままで運営されているって事?」
「そういう事。この物価高の時代を上手く利用した手口ね」
「名探偵さん、裏帳簿なんだけどさ」横で暁美の監視をしていた長四郎が声を掛ける。
「何よ。ヘボ探偵」
「ヘボ探偵は思うんですよ。あそこにあるんじゃない? 裏帳簿」
そういう長四郎の指さす先は、暁美のデスクであった。
「なんで、そう思うの?」
「黒革の手帳を後生大事に持ち歩いている様子から見るに、あれが裏帳簿なんじゃない?」
「え~」
「え~ って、信じてくれないの?」
「いや、どうやって盗みに行こうかって。ねぇ、リリ」賛同を求められたリリは
「盗みに行くとは思ってないよ」と否定される。
「ホント、横暴な子だよな。ラモちゃんは」
「ホント、ホント」
リリは長四郎の発言には賛同する。
「な、何よ。じゃあ、どうやってあの稲垣暁美が横領してるって証明するの?」
「そんなのは自分で考えなさいよ。でも、裏帳簿のコピーは門口早苗さんを殺した犯人が
持ってるかもな」
「根拠は?」
「だって、部屋を探して見つからないって事は、犯人が持ち去った。そう考えるのが妥当
な気がするけどな」
「じゃあ、犯人見つけりゃ取り戻せるかも」
「とっくに処分してるんじゃないの」と水を差すリリ。
「リリちゃん、ホント賢いね。どっかの楽観的JKとは偉い違いだ」
「楽観的で悪かったわね!!」
燐は長四郎に後頭部を思いっきり叩くのだった。