賄賂-12
「どぉ? その後の動きは・・・・・・」
燐は暁美の監視をしているリリに差し入れの品が入ったコンビニ袋を出しながら声を掛ける。
「変わった様子はなし。あ、これ新作のジュースじゃん。ありがとう」
リリはそう言って、ペットボトルの蓋を開ける。
「でね、じゃーん」
燐は門口早苗の部屋から持ち帰ってきた黒革の手帳をリリに見せる。
「もしかして」
「そのもしかしてだよ。多分、裏帳簿のコピーかなぁ~」
「中身を確認してないの?」
「してないよ。だって、ここに表帳簿のコピーがあるからね。照らし合わせたくて・・・・・・」
「さっすが、燐。見よ見よ」
燐とリリは顔を突き合わせて、中身を検め始める。
それから30分後、リリが口を開いた。
「ねぇ、これ。裏帳簿?」
「やっぱり、違うかな?」
「かな? じゃなくて、違うでしょ。だって、これ。家計簿じゃん」
「うぐっ! どうして、家計簿だって分かるの?」
「家計簿じゃん。良いこれ」リリは説明を始めた。
S.Y→SEIYU ¥5,000 LF→LIFE ¥3,635
「といった感じで、スーパーを簡略してその金額を書いているだけ出し、この数字が羅列してあるのって、一か月の総計を計算しているだけじゃん・・・・・・」
「すいません。勇み足でした」
「全く、もうっ!!」
「ごめぇ~ん」
燐は謝罪し、暁美の方に視線を向けると暁美が黒革の手帳を持ってデスクを離れた。
「あ、移動した」
「でも、ここからじゃ追えないよ」
そう燐達が居るのは真向かいのビルであり、そう簡単に追跡できないのだ。
すると、長四郎から着信が入る。
「もしもし?」
「家計簿を持ち帰ったラモちゃんに吉報」
「吉報?」
「裏帳簿に繋がる代物が見つかったですけど、どうされますぅ~」
「取りに行かせて頂きますぅ~」
「そちらに向かいますので、場所をお教えください」
まぁ、何とも事務的な会話をする二人だが、斯くして、長四郎は第三の黒革の手帳を持っ
て燐の元へと向かった。
長四郎と別れた遊原巡査は警視庁へと舞い戻った。
「お疲れ様でぇ~す」
遊原巡査は部屋で雑誌を読んでいる佐藤田警部補にそう声を掛ける。
「おう、お疲れさん」
「班長、どこでどうしていたんです?」
「捜査会議に参加してた」それだけ言って、雑誌に視線を戻す。
「捜査本部は、どういう見解なんですか?」
「お前さんたちが追っている裏帳簿の件には、何にも触れてないよ」
「そうですか。で、犯人に目星付いているんですか?」
「いいや、被害者を恨んでそうな人がいっぱいで」
「そんなに恨みを買いやすいタイプなんすか?」
「清廉潔白みたいな人らしいからね。近所でも結構、揉めてたらしい」
「そうですか・・・・・・」
内線が鳴る。
「はい。命捜班。班長、捜査本部からです」
「おう」と答えて、応答ボタンに手を掛け「はい、もしもし?」と応答する。
二、三言葉を交わして通話を切った。
「何だったんです?」
「重要参考人が連行されたらしい」と答えた。