賄賂-11
「黒革の手帳だな・・・・・・」
長四郎はパラパラと手帳を捲ると、そこには数字がびっしりと書き連ねていた。
「うわっ、これ絶対、裏帳簿だ」燐はそう告げた。
「そうなの?」
「これ、持って帰る!!」
燐は嬉しそうに帰っていった。
「帰っちゃった・・・・・・」
明野巡査が呆気に取られていると「邪魔者は居なくなった。これでスッキリ捜査を始めら
れる」と長四郎は言う。
「これでスッキリって・・・・・・」
「やかましいのが居なくなって。スムーズに行くよ」と遊原巡査は明野巡査が言う。
「でさ、被害者は頭、殴られてたんだよね?」と長四郎が質問する。
「そうです。灰皿でどかんっと一発」
「殺された早苗さんって喫煙者?」
「さぁ、そこまでは」と遊原巡査が答える。
「それがどうしたんですか?」明野巡査が答える。
「いや、この部屋からヤニの匂いがしないなと思ってさ」
「ほら、加熱タバコじゃないですか?」
「遊原君、知らないな。加熱タバコは匂いが少ないと思いがちだが。アレ、結構、匂うのよ」
「そうなの?」
「そうなんじゃない」と答える遊原巡査。
「悪いんだけど、この家に喫煙者が居たか調べてもらえる?」
「分かりました」明野巡査は敬礼し、部屋を後にした。
「探偵さんの推理だと、犯人は喫煙者って事ですか?」
「え? まぁ、そうなるのかな?」
「探偵さんの推理通りだと犯人は、喫煙者かつ横領に関わっている人物ってことですよね
?」
「そ、そうなんじゃない」
「なんか、自信なさげですね」
「なぁ~んか、ねぇ~」
「なぁ~んか、ねぇ~って。何が気になるんですか?」
「それが分かれば苦労しない。犯人は咄嗟的に殺したとはいえ、指紋を拭き取る事を忘れない冷静さを持ち合わせている。そこがなぁ~」
「そこが何だって言うんです?」
「う~ん。なんて言うんだろうね?」
「全部、曖昧ですね」
「良い事、言うね。そう曖昧なんだよ。なんか、犯行動機がふわふわしているよな。明らかにしようとしている人を殺すのは理解できるけど。突発的に殺すか? 殺すなら計画的にやらない?」
「まぁ、言われればそうですね」
「何か、他に動機があるんじゃないかな」
「調べますか?」
「調べようよ」
「じゃ、もう少し部屋の中、捜索しますか!」
遊原巡査は自身にそう言って、発破をかけて気合いを入れる。
長四郎も負けじと自分のお尻をパンパンっと叩いて、気合いを入れて物事をに取り掛かる。
「俺は、もう少し気合いを入れてこの鏡台を調べるから。他の部屋を宜しく」と指示を出して長四郎は鏡台とその周辺を調べ始める。
遊原巡査は他の部屋と言ってもどこを調べて良いものかそう考えた時、ピンっと思いついたキッチンを調べ始めることにした。
キッチンの戸棚を開け閉めして、その中身を確認しているとそこにも黒革の手帳が入っていた。
「また、これだ」
黒革の手帳を開き、書いてある内容を確かめるとそこには、使途不明金の流れが記載されていた。
「探偵さん!!!」
遊原巡査は長四郎を大声で呼びつけるのだった。