賄賂-8
燐の申し出により、変蛇内高校を訪れた四人。
「ここがPTAの役員室」燐はそう言って、部屋の戸を開ける。
すると、そこには稲垣暁美の他に三人の保護者が在室していた。
「あ、すいませぇ〜ん。間違えましたぁ〜」
燐は戸を閉めようとするが、長四郎がそれを止める。
「何すんの?」燐の言葉を無視し「お取り込み中のところすいません。二、三お話をお聞かせ願えないでしょうか?」長四郎はPTA役員の四人に頼み込む。
「我々は構いませんが。警察の方ですか?」と暁美が質問してきたので、明野巡査は警察手帳を提示して身分を明かす。
「で、我々に聞きたいこととは何でしょうか?」
暁美が本題を切り出してきた。
「殺された門口さんはどんな方でしたか?」そう長四郎が質問する。
「そうですね。死んだ人を悪く言いたくないですけど、終始、ムスッとした方でしたね」
そう答えたのは、河合 香織。
「それは言い過ぎよ。そこまで悪い人ではなかったですよ」
次に答えた始めた廣川 景子。
「でも、何を考えているのか、分からない人ではあった」
こう感想を述べたのは、小黒 美樹である。
そして、最後に暁美が「真面目な役員さんでしたよ」そう答えた。
「成程。人物像は掴めました。ありがとうございます」
長四郎は四人に礼を言う。
「では次に、被害者の交友関係は?」遊原巡査が質問した。
「さぁ、そこまでは、ちょっと・・・・・・」最初に答えた廣川と答えは皆、同じ答えだった。
「じゃ、次に被害者が誰かに恨まれるようなことはありませんでしたか?」
明野巡査が今度は質問した。
「分からないです」四人とも同じ答えであった。
「分からないことだらけですね」燐はそう辛辣な言葉をぶつける。
「じゃあ、聞くけど。あなた、同僚のことどこまで知っているの? そんなに知らないでしょ? もう少し考えてからものは言いなさい」と暁美に怒られた。
「内の小僧が不躾な質問してしまい申し訳ございません」と先に謝ってから長四郎は「この中で被害者とトラブルになったと言う方はいらっしゃいますか?」
その答えは四人とも勿論、Noであった。
「そうですか。なしですか・・・・・・ では、最後に一つだけ」
「何でしょうか?」少し機嫌の悪い暁美に長四郎は「この集会は、普段どのくらいの頻度で集まるのでしょうか?」と質問した。
「月2回です。それが何か?」
「いえ、特に何も。ありがとうございました」
長四郎は四人に礼を述べて部屋を退出し、それに続いて燐達も部屋を後にした。
「あれでも刑事なんですかね?」最初に口を開いたのは河合香織であった。
「全く、バカじゃないかしらねぇ? そうは思わない? 廣川さん」
小黒美樹から同意を求められた廣川景子は愛想笑いでしか答えることができなかった。