賄賂-7
長四郎達は、警視庁へと移動した。
命捜班第二班の部屋に入ると明野巡査がホワイトボードに捜査資料を貼っていた。
「あ、お帰りなさい」そう言って、三人を出迎える。
「ただいまー」と遊原巡査が返事しながら自席へと座る。
「あれ? 佐藤田さんは?」長四郎が不在の佐藤田警部補の行き先を尋ねると「班長は捜査会議です」と明野巡査が答える。
「捜査会議。大変だねぇ~」
長四郎は空いている席にドカっと座り、燐も続いて席に着く。
「事件の話をしようか」長四郎は気合いを入れるように顔をパンパンっと叩く。
「はい。死亡推定時刻付近で、被害者宅から逃げ出す女性の姿が目撃されてます」
明野巡査が本題を切り出した。
「死亡推定時刻は?」と長四郎が聞く。
「22時~23時の間です」
「犯人らしき人物が目撃か。他には?」燐が質問した。
「他にはね。エレベーターの防犯カメラには犯人らしき人物は映ってなかった」
「てことは、犯人は非常階段を使ったか・・・・・・」
顔をしかめながら、天を見上げる長四郎。
「そうだとすると、探偵さんの推理とは違いますよね? 計画的な犯行に感じる」と遊原巡査が感想を述べる。
「遊原君の言う通り!」
「ラモちゃん、それはないぜ。大っぴらに出来ない用があって非常階段を使ったとも考えられるぜ」
「屁理屈だぁ~」
「屁理屈じゃないっつーの」
「二人、喧嘩しない!」明野巡査に怒られた二人は「すいませぇ~ん」と声を揃えて謝る。
「被害者宅が荒らされている痕跡が無かった事から、捜査本部では単なる殺人事件として捜査していくみたいです」と捜査本部の捜査方針を伝える明野巡査。
「そうか・・・・・・」長四郎は顎を擦りながら何かを考える。
「探偵さん、何か?」明野巡査が質問すると「ダメよ。この状態になると何も答えないから」と燐が代わりに答える。
「そうなんだ。知らなかった」遊原巡査が感心する。
「そんなことより、事件の話。探偵さんの推理ってどうなの?」
明野巡査は聞いていない長四郎の推理について質問した。
「咄嗟的な犯行だ。っていうのが、あいつの推理」
「そうなんだ。それで、これからどうするの?」
「それなんだけど、どうやったら、犯人に辿り着くのか・・・・・・」
燐はう~んっと考え込み始める。
「探偵さんの考えは?」
「俺はラモちゃんの調査がカギかなとは思っている」
「ラモちゃんの調査ですか?」
「そう、泉ちゃん。ラモちゃんを急かして」
「いや、でも・・・・・・」
真剣な顔で考える燐を見て、どう急かせと言うんだと思う明野巡査。
「ラモちゃん。どうするの?」と遊原巡査がズバッと切り込む。
「うむ。なんで、タレコミをした人が殺されたのが気になるから、そこを調べたいかも」と答えた。
「じゃ、そこから調べましょうか」
明野巡査の号令を四人は行動を開始した。