賄賂-6
翌日、燐は事件現場へと来ていた。
だが、先客が居た。そう、長四郎である。遊原巡査を連れ立って事件現場へと来ていた。
「なんで、あんたがここに居るの?」
「それはこっちの台詞だよ。よく一人ノコノコ来たな」と感心する遊原巡査。
「来て悪かったわね!!」
燐は憂さを晴らすかのように長四郎の尻をバンッと叩く。
「なぁ~んで、俺が叩かれなくちゃいけない訳?」
涙目で訴える長四郎に燐は「ムカついたから」という身勝手な理由を述べる。
「酷いな」と遊原巡査がそう言う。
「酷いよね?」長四郎が同情を買おうとすると「もう一発、お見舞いしようか?」燐がニコニコ笑顔で告げる。
「結構です」
「宜しい」
「では、事件の捜査に戻りましょうか?」
遊原巡査が話を修正し、三人は事件の捜査に乗り出す。
「被害者は、専業主婦の門口 早苗さん。47歳。彼女の死因は頭部に受けた打撃による脳出血です」
「凶器は?」遊原巡査に長四郎が質問すると凶器の写真を見せる。
「この灰皿で、一撃」
「それ以上は言わなくて良いわ」
「そうですか」少しつまらなさそうに答える遊原巡査に今度は燐が質問した。
「遊原君、指紋は?」
「拭き取られていた」
「そう、ありがとう」
「どう、思うよ」燐は長四郎の見解を求めると「う~ん。計画的な犯行ではないだろうな」と答える。
「なんで、そう思うんです。探偵さん」
「凶器だよ。計画的犯行であれば、そんな凶器は選ばないでしょ。咄嗟的に近くにあった灰皿を手にとって殴っただろうな」
「で、殺して。やべぇと思って指紋を拭いたと」
「そうなんじゃない? 知らんけど」無責任な事を言う長四郎。
「知らんけどって・・・・・・」
「それで、探偵さんはこっからどう捜査を進めるんですか?」
「どうしようかなぁ~ あ、ラモちゃんはどうするの?」
「実はこの殺された人ってのが」
「ラモちゃんが調べている横領事件をタレこんだPTA役員ってとこだろ?」
長四郎は話も聞かずズバリと言い当てる。
「当たってる。チキショー」燐は悔しがる。
「悔しがってないで。ラモちゃんはこれからどうするの?」
遊原巡査にも聞かれた燐はう~んっと考えた後に、口を開いた。
「この部屋にあるかもしれない裏帳簿を探そう!」と。だが、それは一蹴された。
「それは無いと思うよ。犯人が持ち去っているか、別の場所に隠しているかの二択だ」
「探偵さんに一本!」遊原巡査はそう判定を下す。
「え~」不服そうな燐。
「でも、その裏帳簿がカギなのは間違いないから。そっちから調べてみるか・・・・・・」
長四郎の提案が採用される形となり、三人は部屋を後にした。
次に向かったのは、燐が通う変蛇内高校であった。
裏帳簿が学校にあるのでは、という長四郎の推理の元、PTA役員室へと入室した長四郎、燐、遊原巡査の三人。
「ねぇ、本当にあると思う? こんなところに。私だったら、こんなところに隠したりしないな」
「葉っぱを隠すなら林より森の中って奴でな。あるかもしれない」
だが、捜索から1時間が経過しても、裏帳簿らしきものは見つからなかった。
「ダメだったじゃん」燐が文句を言うと「めんご」と謝罪の言葉を述べる長四郎。
「で、お次はどうするんです?」
遊原巡査が質問した時スマホに着信が入った。