賄賂-5
殺人が起きた現場は学校の近くのマンションであった。
燐は規制線がない場所からマンションへと侵入し、刑事達がうろついている階へと向かった。
「お疲れ様でぇ~す」
刑事達にそう挨拶しながら、燐は殺人事件が起きた部屋へと向かう。
「失礼しまぁ~す」燐はそう言いながら、部屋へと侵入する。
廊下を渡ってリビングルームへと入ると、そこが殺害現場であった。
頭から血を流しながら、うつ伏せ倒れる女性のご遺体があった。
「あらまぁ~」
驚いていると、「誰だ! 貴様っ!!」と一人の刑事が部外者の燐に気が付いた。
「やべっ!!!」燐は大慌てで逃げようとする燐の手をガっと掴んで逃がそうとしない刑事。
これは、マズい事になった。そう思っていると「彼女は内で預かりますから」と聞き覚えのある声がした。
声の方を向くと、捜査一課命捜班第二班の佐藤田 一喜警部補、遊原 祐希巡査と明野 泉巡査がそこにいた。
「あ」
「あ、じゃないよ。ラモちゃん、何してるの?」
首根っこを掴み燐を注意する明野巡査。
「いや、ごめんて。これには訳が」
「どんな訳よ」と遊原巡査が言う。
「それは」
「言えないは無しだよ」と佐藤田警部補はチュッパチャプスを取り出し、口に入れる。
「うぐっ」
ここで白を切ると佐藤田警部補は容赦なく公務執行妨害で燐に手錠を掛けるであろうことが分かっている。
「さ、答えなさい」明野巡査にそう言われて燐は観念した。
「分かりました。答えます。実は、うんぬんかんぬんで」
「成程、学校の横領事件を」遊原巡査が言い「ねぇ、なんで、ラモちゃんがそれを調べるの?」と明野巡査が質問する。
「特命を受けたの」
「凄い。理事長だねぇ~」佐藤田警部補は目を丸くする。
「まぁ、私もビックリしたんですけどね」
「で、今回の事件も調査するよう言われたの?」
明野巡査の問いにコクリと頷いて、燐は答える。
「どうしようもない理事長ね」という明野巡査に「そうでもないと思うよ」と否定の言葉を述べる佐藤田警部補。
「班長はどっちの味方なんですか?」
「う~ん。正義のミカタ」そう言う佐藤田警部補はニヤッと笑うのだった。
「で。俺に何の用?」
長四郎は事務所を訪ねてきた明野巡査にそう告げた。
「いや、用があるから来たんです」
「泉ちゃんが来るときは、殺人事件が起きた時でしょ? 俺に頼って良いの? というよりラモちゃんが関わっているんでしょ?」
「そうです。探偵さんには監督義務があるんですから」
「え~ いつからラモちゃんの監督になったんだよ。俺は」
「つべこべ言わずにラモちゃんに協力してあげてください。お願いしますよ」
明野巡査はそう告げて事務所を後にした。
「はぁ~ 仕方ない」
長四郎は椅子から立ち上がり、行動を開始した。