賄賂-2
パシャパシャ
燐はシャッターを切る。カメラの向こうにいるのは、理事の金子慎吾である。
金子は今、高級フレンチレストランへと入っていった。
燐はこの金子からマークすることにした。そして、マークして一週間が経とうとしていた。
「今日も晩飯は高級レストランか・・・・・・」
金子は毎晩のように高級レストランに通いその後にキャバクラへと繰り出す。その繰り返しであった。
「スケベな親父・・・・・・」
燐は呆れかえっていると、スマホに着信が入る。
「はい、もしもし?」
「私よ」
「理事長ですか。どうしました?」
「実は再来週にPTAの役員会が開かれる事になってね。そこで、稲垣暁美がPTA会長になるかもしれない」
「つまり、それを阻止したいので早く事件を解決しろ。って、ことですか?」
「そういう事。これ以上、学園の金を使わせてなるものですか!」
「はい、分かりました。何とかします」
燐は深いため息と共に通話を終了した。
「参ったね。どうも」
燐は踵を返して、一旦、出直すことにした。
翌日、燐は学校に登校した。
「ふわぁ~わ」
大きなあくびをしていると、「寝不足ぅ~」とリリが声をかけてきた。
「うん、寝不足。もうさ、大人の男ってどうして、ああも若い女を求めるのかなと思ってさ」
「そうなの?」
「そうだよ。でさ、頼んでいたことなんだけど」
燐は金子を調査している間に、稲垣の子供の調査をリリに依頼していたのだ。
「調べてるよ。はい、これ。見よう見まねの調査書」
リリはそう言って、冊子を燐に手渡した。
稲垣 久子
年齢 17歳
成績は中の上だが、スポーツは万能で部活動のバスケットボール部では次期キャプテンと言われる程の実力とリーダーシップを兼ね備えた女子生徒である。
「なぁ~るほどねぇ~」燐は冊子を見ながら、また大きなあくびをする。
「どう? 役に立ちそう?」
「あ、うん。ありがとう」
「で、これからどうするの?」
「う~ん」と燐は少し考えてから「もう少し、詳しく知りたいな。この稲垣久子さんのこと」という。
「分かった。私も」
「手伝う。でしょ」
「分かっているじゃないぃ~」
燐とリリはハイタッチを交わすのだった。
斯くして、稲垣久子の調査が始まった。
稲垣久子の日常は平々凡々とした高校生の日常そのものといっても過言ではないものであった。
「普通だね」と燐が言い「うん、普通」と言うリリ。
それぐらい普通なのだ。
「ねぇ、あの人の親が横領してるとか思うと。なんか可哀想に思えてくるね」
「リリは優しいね。私、そうは思わないわ。逆に怪しいとすら思う」
「そうなの? 人間、歪んでんじゃない?」
「そうね。変な奴と関わったせいで歪んだと思う」
「絶対、違うと思う」リリはそう言うのだが、燐は「そうかなぁ~」と言って首をかしげるのだった。