賄賂-1
「失礼しまぁ~す」
羅猛 燐は理事長室へと入る。燐は変蛇内高校の理事長を勤める梅宮 辰巳に呼び出されて理事長室へと訪れていた。
「来てくれたわね」クルっと回転し、燐にその顔を見せる。
年の割には若く見え、美容に気を使っているのが良く分かる見た目の理事長であった。
「どうも、初めまして」
「そう固くならないで。さ、そこに座って」
梅宮は燐を来客用のソファーに座るように促し、「失礼します」そう言って燐はソファーに腰掛ける。
「さ、本題に入るわね」梅宮は燐に冊子を渡す。
「これは?」
「中を見て」
燐は冊子を開いて中身を確認する。そこに載っていたのは学校の理事を務める金子 慎吾とPTA役員の稲垣 暁美の二人であった。
「この二人が何か?」
「この二人の間にどうも、不正な金が流れているらしいの」
「横領って事ですか?」
「ええ」
「でも、なんで私にこんな話を?」
「だって、あなた探偵しているんでしょ?」
「ま、まぁ」
「だから、あなたに依頼したいの。この二人の不正を暴くために」
「特命ってことですか?」
「そう。特命」
「分かりました」
燐は理事長の特命を引き受けた。
「とは言うものの、どう調べて行けば良いものか・・・・・・」
燐は屋上で昼食を食べながら、調査方法に思案していると。
「探偵さんに頼れば良いじゃない」
そう友人の海部 リリが声を掛ける。
「あ、そうだね。ありがとう。って、何、見てんのよ」
燐は咄嗟に冊子を隠す。
「もう見ちゃったもぉ~ん」
「はぁ、仕方ない。手伝ってくれるかな?」
「いいともぉ~」リリは元気よく返事をする。
そう言う事で、燐は私立探偵の熱海 長四郎に協力を申し出るために事務所を訪れた。
「居るぅ~」そう言いながら、ドアを開けると長四郎はソファーに寝っ転がりながらテレビを見ていた。
「何してるの?」
「ワイドショー、見てる」
長四郎は面倒くさそうに答える。
「仕事よ。仕事」
燐はテレビを消して、長四郎を叩き起こす。
「え~ また殺人事件ぅ~」
「違うし。横領よ横領」
「ああ、金の流れを追う的な。ね」
「でさ、どうやったら追えるの?」
「身辺調査が先だなぁ~ そこから始めないと」
「身辺調査か・・・・・・」
「じゃ、頑張れぇ~」
長四郎はテレビの電源を入れて再び視聴を始める。
「ちょっと、何、吞気にテレビ見ようとしているわけ?」
「いや、だって。ラモちゃんが受けた依頼でしょ? まぁ、一人で頑張れ」
「やらないって言う訳?」
「おう」
「でも、やらせるのが私なの。いい加減学習したら?」
「学ばない事もある意味、大事なことなんだよ。ラモちゃん」
「はぁ~ 自分がバカらしくなってきた」
「ま、機材は貸してあげるから」
「言われなくてもお借りするよっ!!」
燐はプンスカしながら、長四郎の所有する機材を持って事務所を後にした。