都市-13
翌日、燐は一人で塾を追っていた。
「何してんの? あいつ・・・・・・」
燐は逐一、長四郎に塾の行動を報告していた。
だが、長四郎から返信が返ってくることはなかった。
「ホント、ムカつく」
燐は腐らず、塾の尾行を継続した。
塾は普段と変わらず病院を転々としながら、営業して回る。
そして、病院だけでなく学校も尋ねる。長四郎の推理通り、紘一を探し回っているようであった。
そして、ある病院を訪れた後、塾の顔が晴れたような感じがした。
燐はその事も長四郎に報告した。
塾は定時で退社した後、行方をくらました。
「えっ、なんでぇ~」
戸惑う燐の元に長四郎から返信がこのタイミングで返ってきた。
「このタイミングかよっ!!」
燐は長四郎に指定された場所へと向かった。
その場所とは、紘一が目撃した湯島天神であった。
「なんで、ここなの?」燐は説明を求める。
「ここが重要なのさ」長四郎はそれだけ答える。
「ねぇ、私の報告見てた?」
「ああ、見てたよ」
「なんで、返事しないの?」
「色々と準備で忙しかったからね。でも、おかげで助かったよ」
「ホント!?」
「ホント、ホント」
少し嬉しくなる燐は長四郎にここまで気になっていた事を聞く。
「あのさ、塾って人が犯人だとして、なんで、被害者の顔を引きつらせる必要があるの?」
「趣味なんじゃない? そういう事は、本人に聞いてみないと・・・・・・」
「本人、行方くらましちゃったんだけど」
「ラモちゃんの尾行が気づかれていたんだろうな。まだまだだね。修行せにゃ」
「気づかれていたって。国外逃亡するんじゃない」
「奴はそんな魂じゃないよ」
「なんで、分かるの?」
「分かるよ。そりゃ。だって、ほらっ」
長四郎が指さしたその先に紘一らしき人物が境内に入ってきた。そして、その後ろを付いて歩く一人の大人らしき姿。
「あ、来たっ!!」
燐は嬉しそうに大きな声を出すので長四郎は咄嗟に口を押さえつける。
「ふがっふがっ!?(訳:何すんのよ!?)」
「しぃ~」長四郎は燐に静かにするよう注意する。
紘一らしき人物は、本殿でお参りし帰宅の途につこうとした瞬間、尾行していた男が立ち塞がった。
そして、男の手には医療用メスが握られていた。そして、それを一突き、紘一らしき人物に向けるのだった。
だが、それは不発に終わった。紘一らしき人物に一投げされ、綺麗に宙を舞う男。
ドサッという音と共に、男は地面に倒された。
「確保ぉ~」紘一らしき人物がそう叫ぶと身を隠していた刑事達が男目掛けて、覆いかぶさる。
「はい。作戦大成功」長四郎は平常心のまま刑事達の元へと歩き出す。
「はぁ~い。皆さん、お疲れ様でしたぁ~」
長四郎は刑事達にそう声をかけながら、捕まえた男のご尊顔を伺おうとする。
「ちょっと、どういう事?」説明を求める燐を差し置いて、長四郎は男の顔を見て「ビンゴっ!!」と指パッチンして喜びいさむ。
「何が、ビンゴだっ!! 離せっ!!!」
塾は刑事達の拘束をほどこうとする。
「刑事さん達、連行してください」長四郎がそう言うと、刑事達の元気な「はいっ!!」という返事と共に塾は警察署へと連行された。