都市-11
長四郎は燐に呼び出されて、帳場のある所轄署へと訪れた。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」
長四郎は吞気に燐達の居る資料室へと入る。
「はぁ~」燐はがっくりと肩を落とす。呆れて物も言えないって感じの意味で。
「何でため息をつくわけ?」
「吞気な態度のあんたに呆れてるだけだよ。ね、絢さん」
「あ、うん」
「絢ちゃんまでそんなこと言うの? おじさん、ショックぅ~」
「はい、お疲れさん」一川警部が部屋に入ってきた。
「お疲れ様でぇ~す」
三人、声揃えて返事をする。
「で、俺を呼び出した理由を聞かせて?」
長四郎は本題を切り出す。
「犯人ついて、少しだけプロファイルしてみたの」
「お~」長四郎が拍手をすると一川警部、絢巡査長も拍手をする。
「どうも、ありがとう」拍手が止み、燐は話し始めた。
「今回の犯人は男ね。しかも、か弱い女性もしくは自分より弱い立場にいるの人間を傷つけるのが趣味な奴。年齢はそう20~30代の力がみなぎる時の人間かしら」
「年を食っているからこそ、弱い人間を襲うとは考えないんだ」と長四郎がツッコミをいれる。
「うっ!」痛いところを突かれ、燐はたじろぐ。
「でも、その線は間違いない。んで、追加するなら犯人は通り魔事件と同様にこの文京区に土地勘のある奴。そして、医療用メスを扱える人間だな」
「ということは、お医者さんって事ですか?」
「とは限らないのだ」
「お前はいつから、ずんだもんになったわけ?」
「何を言っているのか、分からないのだ。そんなことはどうも良いのだ。これを見てくれなのだ」
長四郎は二枚の写真を机の上に置いた。
「オクサン、シャチョサン? なにこれ?」
「これは、医療用器具を扱っている商社の写真ばい」と一川警部が解説する。
「商社?」
「そう、商社。ここの社員が一番怪しいかなと」
「なんで?」
「営業であれば、近所をうろつき回るし、文京区内を担当していれば土地勘も身につけられるだろ?」
「そ、そうねぇ~」なんか、納得の行かないみたいな顔をする燐。
「ラモちゃん。なんか不服そうだねぇ~」
「いやぁ~ 病院関係者でも文京区内で住んでいれば土地勘もあるかなって」
「そう考えるのは無理はないよね? でも、こうは考えられないか?」
「どう考えるの?」
「病院であれば、医療用メスを好き勝手引っ張りだせると思うか? 納品される数が決まっている中でチラホラ中抜けするとその時点で分かるだろ。だが、営業であればそれを調整できるんだよ。会社に報告する納入数を多く。実際に病院に納入する納入数を少なくすると簡単に凶器を入手できるからな」
「架空の請求を利用しているって訳か・・・・・・」絢巡査長は納得したようでうんうんと頷いて見せる。
「それで凶器を手に入れるのは良いとして、犯人に心当たりはあるの?」
「ある。というか、これから調べる」
「ねぇ、私にも手伝わせてよ」
「嫌だって言っても、勝手に付いてくるでしょ?」
「分かっているじゃない」
こうして、長四郎と燐はオクサン社の塾を一川警部と絢巡査長はシャチョサン社の桐谷を調べることとなった。