世界-14
その日の夜、子安は収録を終え自宅へと帰宅した。
そのタイミングで、チャイムが鳴る。
モニターに映るのは、例の探偵とその取り巻き達。
「はぁ~」疲れている中、こいつらの相手をするのかそう思うため息をつく子安は応答のボタンを押す。
「はい」
「夜分遅くに失礼します。事件解決の為のご協力を願えないでしょうか?」
長四郎は満面の笑みでモニターカメラに向かって手を振る。
「分かりました」
開錠のボタンを押して長四郎たちを招き入れる。
「お邪魔しまぁ~す」
エレベーターを降りた長四郎の第一声はそれであった。
「いらっしゃいませ。それで、今日はどのような御用件ですか?」
「それは、ですね」
「それは、あんたを逮捕しに来たんだよ!!」
長四郎の台詞を奪う燐は金田一少年ばりに子安を指差す。
「はい?」
あまりにも唐突すぎて、子安は戸惑う。
「ごめんなさい。ラモちゃん、ダメでしょ。最初に言っちゃぁ~」
「え~ なんでぇ~」
「なんでも!!」
「あのお二人さん、言い合いしてないで。早く話してあげてください。子安さんが」
遊原巡査が二人にそう忠告すると、子安はキッとこちらを睨んでいた。
「あ、申し訳ない。ここじゃ何ですのでお話しませんか?」
長四郎の申し出で、リビングへと場所を移した一同。
「では、どうして子安さんが犯人なのか?」長四郎は本題を切り出した。
「疲れているので、手短に説明して欲しいですね」
ソファーにドカッと腰を降ろす子安は長四郎の話に耳を傾けようとする。
「では、始めさせて頂きます。上の階の殺人事件は、密室殺人事件でした。が、そうではなかった」
「と言いますと?」
「ダストシュートです。あれは、部屋を繋ぐ為の通り道みたいなものです。犯人はそここから侵入した。それがつまりあなたです」
「何を言い出すのかと思えば・・・・・・」
「突飛な話だとお思いでしょうが、ラモちゃんっ!」長四郎は指をパッチンと鳴らす。
燐は昼間にスタジオで撮影した動画を子安に見せる。
「この動画の通り、貴方は6mの壁をスルスルといとも簡単に登る事ができる。つまり、ダストシュートを使って貴方は灰尾栄光さんの自宅へと侵入し、殺害した」
「証拠はあるんですか?」
「ありますよ。この部屋の中に。あそこです」
長四郎はダストシュートを指し、その場所に移動する。
「ここなんです、が!」
ダストシュートのカバーを引っ張って、取り外す。
「これ、簡単に外せますよね。これが証拠の一つです」
「どういうことですか。探偵さん」
意味が分からず、遊原巡査は説明を求める。
「管理会社に確認したんだけど、これ、気安くとれるようなものじゃないんだって。簡単に人が入って落っこちたらまずいでしょ」
「確かにそうですけど」
「そんで、ここを開けて、貴方は上の階のダストシュート口にザイルを引っ掛けて貴方は登っていき、殺害した。それに上の階のダストシュート口が壊れているのを貴方は知っていた。以前、会った時にあなた自身がお話しましたよ」
「そ、それは・・・・・・」
「それに下足痕もしっかりと残っていましたしね」
燐は下足痕を模ったシートを子安に見せる。
「後は、凶器なんですがどこに? 捨てたとは思っていないんですよ。警察もバカじゃないですからね。密室殺人事件ですから、住人のゴミに含まれているかは最初に調べて居ますから」
「その答えは・・・・・・ これですよ!!」
ソファーの背もたれと座面の間に隠していたサバイバルナイフを取り出した子安は、燐を人質にして逃亡しようとする。
「参ったね・・・・・・ どうも」
「ええ、本当に」長四郎の発言に賛同する遊原巡査。
「そんなこと言わずに助けなさいよ!!」
「え~ 自分で何とかしなよ」
「グチグチ言ってないで、逃走用の車を用意しろっ!!」
「どうする?」
「警察はそういうことに応じないっ!!」
遊原巡査はきっぱりとそう言い切る。
「な、何をぉ~」
ムカついた燐は凄まじかった。自分の首を捉える腕にがぶっと噛みつき、出来た僅かな隙にみぞおちにエルボーを浴びせ子安をノックアウトさせるのだった。
斯くして、犯人、子安 康子は逮捕されたのだった。