世界-12
警視庁へと戻った長四郎達が向かったのは、倉久が留置されている留置場であった。
「どうして、認めたんですか!?」
燐は倉久が入っている牢に入るや否や詰め寄って、問い詰める。
「どうしてって・・・・・・」
「ラモちゃん、落ち着け」
長四郎は燐を引き離してから「是非、説明して欲しいですね」と質問した。
「それは・・・・・・」
「それは?」
「それは・・・・・・言えません」
「何でよ!」燐は通常運転通り、ブチ切れる。
「それを聞いても答えないよ。ラモちゃん」
長四郎は諦めたような感じの素振りを見せる。
「諦めんなよ!!」燐は某テニスプレイヤーみたいな事を言う。
「そうだね。そうだね。あ、倉久さん。もう少しで事件解決しますんで、ご安心ください」
「分かりました」
ジタバタ抵抗する燐を連れて、留置場を後にする長四郎。
部屋に戻ったと同時に燐が口火を切った。
「あんた、あっさり引き下がって良いと思ってる訳?」
「思ってるよぉ~」
その返しを見て、遊原巡査はぷっと笑う。
「何が可笑しいのよ」
「いや、何も可笑しくはないよ」と言いつつも、遊原巡査の肩は小刻みに揺らす。
「あんたからも何か言いなさいよ」
「特に言うことはない!」と言い切る長四郎。
「でさ、犯人は誰なの?」
燐は本題を切り出した。
「読者の皆様は、もうお気づきじゃないのかしら?」
「読者の皆様、そうなんですか?」
燐は読者の皆様にそう尋ねた。
「それよりも、鑑識作業の結果が知りたいよなぁ~」
「お疲れ様ぁ~」
佐藤田警部補が帰ってきた。
「お疲れ様でぇす」三人は声を揃える。
「で、どうでした?」
「あ、うん。流石は名探偵、下足痕あったよ」
「うっそぉ~」燐は驚嘆の声を出す。
「噓じゃないよ。本当なんだから」
「ラモちゃんも疑り深いねぇ~」遊原巡査は呆れる。
「いつもの事だから。それで、他に何か分かりました?」
「あ、うん。やっぱり、ダストシュートの入り口に紐引っかけて侵入したみたいね」
「てことは、ロープ後もあったというわけですか」
「そう」
「でも、タワマンだよ? 一階から昇ったとでもいうわけ?」
「ラモちゃん、分かってないな。犯人は特殊な訓練を受けているから、こういうのがお茶の子さいさいって訳?」
「特殊な訓練? あんた、本気で言ってるの?」
「言ってる。言ってる」
「探偵さんの言う犯人、俺、分かっちゃったかもです」
「ウソォ~」
「噓じゃないし」
「ま、それはさておきさ。どうやって切り崩す気なの?」
「そこなんですよ。佐藤田さん。俺もそこをずっと考えているんですよ」
「大変だねぇ~」
佐藤田警部補は無責任な感じで長四郎の気苦労をねぎらう。
「それじゃあ、切り崩し作戦を開始しましょうかっ!!」
長四郎は顔をパンパンっと叩いて、自身の気合を入れるのだった。
翌日、長四郎と燐はテレビ局に居た。
目的は下の階の住人、子安に会うためだ。
「ここに来たのなんで?」
「なんでだろう?」
スルッと、とぼけて見せる長四郎に燐は深いため息をつくのだった。