世界-9
昼ご飯を食べ終えた長四郎、燐、遊原巡査の三人は、事件現場のマンションへと向かっていた。
「ずっと、気になっているんだけどさ」燐が口を開いた。
「何?」
「どうしたの?」
車を走らせる遊原巡査はルームミラー越しに後部座席の燐へ視線を向ける。
「犯人の目星はついているの?」
「どうなんです? 探偵さん」
「どうって・・・・・・ まだ、確証はないから言わない」
「って事は、目星はついているんだ」
燐はふんぞり返りながら、助手席の長四郎に目を向ける。
「ついてはいるけど、その人が犯人とは限らないし」
「やっぱり、あれっすか? 犯人は狡猾な感じな感じなんすか?」
「遊原君。プロファイラーにでもなったら?」
「茶化さないでください」
「こいつ、すぐに人の話を茶化すから、、気を付けな」
「お、おう」
女子高生からのアドバイスに戸惑いながら、返事をする遊原巡査。
「あのさ、マンションに行って何が分かるの?」
「確証を得にいくのさ」
そう答える長四郎の目は、真剣そのものだった。
マンションに着いた三人。そして、長四郎の進言でゴミシューターの排出口に来ていた。
「ここが確証に変わるの?」
「いいや。取り敢えず、君らはここで待機」
長四郎は二人に指示を出して、ゴミの山へと昇り始める。
「あいつ、何するんだろ?」
「さぁ?」
遊原巡査と燐は、ゴミを漁り始める長四郎を只見守るしかなかった。
そんな長四郎はゴミを一生懸命漁る。ちぎっては投げ、ちぎっては投げの繰り返し。
「手伝おうかぁ~」燐が声を掛けるが、長四郎は手を挙げて返事をするだけで只、黙々と作業をする。
長四郎はある少し、薄汚れたゴミ袋を遂に見つける。
「あったぁ~」
「何が、あったのぉ~」
そう聞く燐目掛けて、見つけたゴミ袋を投げる長四郎。
「あぶねっ」
燐は咄嗟に避ける。その避けた瞬間に、遊原巡査を突き飛ばしてしまい遊原巡査は壁に頭をぶつける。
そして、白眼を向いて倒れる。
「ああ、遊原君!!」
お慌てで、燐は遊原巡査の身体支える。
「何があった?」
長四郎は身を乗り出して、状況を確認する
「ゆ、遊原君が!!」
「なぁ~むぅ~」そう言って、長四郎は遊原巡査に手を合わせて葬ろうとするのだった。
「あれ?」
遊原巡査が意識を取り戻した時、被害者の部屋のソファーで寝ていた。
「あ、生き返った」燐は安堵で胸を撫で下ろす。
「失礼な言い方すな」
ダストシュートに頭を突っ込んでいる長四郎はそう言う。
「探偵さん、何してんの?」
「あの中、調べてる」燐は長四郎の方を指差して、教える。
「ダストシュートに何があるの?」
「わっかんない。聞いても教えてくれないんだよね」
「そうなの? 投げたゴミ袋は?」
「ああ、あれでしょ?」
長四郎の足元に置いてあるゴミ袋を指差す燐。
「あれ、何だったの?」
「あれね。中身じゃないんだって、大事なのは」
「中身じゃないの?」
「うん。あ、それでさ、鑑識を呼んでほしいって。あいつが」
「なんで?」急な要請依頼で理由を求めると「なんで?」と長四郎に聞く燐。
「確証に変わるから」
ダストシュートから顔を出した長四郎はそう答えた。