幻想-20
明くる日、事件現場である秋葉原にあるライブハウスに集められた獲濡剛士、赤座龍二、椿始、川久保一輝、真田純の五人。
「なんで、俺たちが集められたんでしょうか?」
そう最初に漏らしたのは川久保であった。
「例の刑事さんから、金田さんの事件で犯人が分かったって事らしいので」
長四郎の代わりに説明する剛士。
「私、取調べ受けちゃったんですぅ~」
真田はぶりっ子めいた言い方で昨日のことを四人に報告する。
「そ、そうなんだ・・・・・・」
赤座は気まずそうに返事をする。
剛士を除く三人は、この真田と交際していた過去がありつい先日には、雪代が真田を襲うという事態にまで発展する始末。男性側はどう真田と向き合えば良いのか内心戸惑っていた。
すると、ライブ内が暗転すると共に、ミラーボールが回り始めた。
「え? 何!?」椿が最初に声を出した。
「レディース&ジェントルマァ~ン!!」
長四郎の声がライブハウスに響き渡ると、ジャスティのイントロが流れる。
「何々?」川久保が周囲をキョロキョロと見回す。
「どうも、お待たせしましたぁ~」
アイドルが出てくる出入り口から長四郎が登場する。
「刑事さん!?」
「獲濡さん、私は刑事ではないんですよ。じゃあ、その正体は!? って、なりますよね」
「は、はい」少しこっ恥ずかしい気持ちになる剛士。
「刑事でもない私が何故、殺人事件の捜査をしているのか? それは」そう言いかけた時、燐が長四郎を蹴っ飛ばす。
「やかましい。さっさと自分が探偵だと言えや」
「蘭ちゃんって、暴力女子なんだ・・・・・・」
川久保が驚きの声を出すと、燐は「あ!?」と凄んだ声で川久保を睨む。
「何でもありません」川久保は燐から目線を逸らす。
「脅かして申し訳ない」と前置き長四郎はスっと立ち上がり「今日、集まってもらったのは貴方達の仲間であった金田さんを殺害した犯人が分かったからです」と本題を切り出す。
「本当ですか!?」
「犯人は誰なんです!?」
「教えてくださいぃ~」
そう口々に発言をする。
「まぁ、その前にどういったトリックで殺害したのか、そこからお話をしましょう」
長四郎はそういう切り口からで話を進める。
「金田さんは犯人に毒を盛られて殺されたんです。ああ、仰らないで。どのような毒か? ってことですよね? 強心配糖体という所謂、強心剤に用いられる成分ですね。摂り過ぎ注意って奴ですね」
「あの、発言をしても?」剛士が挙手をして質問を求める。
「どうぞ」
「犯人はその毒をどうやって、入手したんですか? 我々の中に医療関係の人間はいませんが」
「獲濡さん、良い質問です。そうこの中に医療関係の仕事をなさっている方は居ません。ですが、毒物を入手できる人物が一人います。が、そこではなく毒をどうやって盛ったのかです」
燐は心の中で「勿体ぶらずに早く犯人言えよ」そう思いながら、長四郎の話に耳を傾ける。
「犯人は、職場で採取した毒化合物をドリンクに混ぜたんです。なんせ、ライブ前は一杯やろうとするお客で溢れかえっている最中に毒を混入することは可能です。目撃者は探しても出てこないでしょう」
「じゃあ、どうやって犯人を立証するんです?」椿が質問した。
「それなんですがね。危うかった。危うく犯人にしてやられるところでした。犯人はビックリしたでしょうね。あるはずの物がなかった訳ですから」
「あるはずの物ってなんです?」今度は、赤座が問うた。
「ふっふふっ」長四郎は薄気味悪い笑い声を出しながら、ジャケットのポケットからポチ袋に入ったスポイトを四人に見せる。
「それが凶器なんですか?」
川久保が質問すると、長四郎はコクリと頷く。
「凶器というより物証ですがね。これを使ってドリンクに強心配糖体の入った液体を仕込んだ。それを金田さんは飲んで亡くなった。犯人はこれをトイレのタンクに隠していたんです。毒を盛ってすぐに隠したのか、はたまた、死んだ後に隠したのかは定かではありません」
「そんで、これが誰の物かも立証できるんです! だよね?」長四郎に確認をする燐。
「そう。ある人物のゴミから証拠隠滅の為に捨てたこれと同じ物がありました」
「もう、結構です!! それで犯人は誰なんですか!!!」
川久保が長四郎にそう問うと、入口の方で「ギャァァァァ!!」という女性の悲鳴が聞こえた。