幻想-17
「え? 二年前の事件ですか?」
棚に商品を整列しながら、絢巡査長の質問に答える。アイドルは今、コンビニでアルバイト店員をしていた。
「はい。何か変わったことはありませんでした?」
「なかったと思いますけどね」
「そうですか。ありがとうございました」
絢巡査長が帰ろうとした時、店員が「あ、そう言えば」と何かを思い出したようだった。
「どうしました?」
「あいつ、ライブ前にファンから差し入れられた飲み物を飲んでいましたよ」
「本当ですか!?」
「確かそうだったかと」
「ありがとうございました!!」
絢巡査長はコンビニを出てすぐに長四郎に電話をしようとスマホをハンドバックから取り出す。
すると、そのタイミングで明野巡査から着信が入った。
「もしもし?」
「絢さん、お疲れ様です」
「お疲れ。どうしたの?」
「今、一年前の資料を読んでいたんですけど、五反田でも似たような事件が」
「五反田ね。そのデータを送って」
「分かりました。私もそちらに合流しても?」
「うん。お願い」
「了解。明野は直ちにそちらに向かいます!」
そこで通話が終了し、明野巡査から一年前の事件の資料のデータがスマホに送られた。
「これか・・・・・・」
一年前の1月、ライブ中に女性アイドルがライブ中に倒れ、そのまま亡くなってしまった事件であった。これも病死と判断されてそのままになっていた。
絢巡査長は取り敢えず、ライブハウスがある五反田へと向かった。
五反田駅で明野巡査と合流し、二人はライブハウスを訪れた。
すると、燐と長四郎がそのライブハウスに居た。
「長さん」
「探偵さん」
女性刑事の二人、各々長四郎に声を掛ける。
「お、絢ちゃんに泉ちゃんじゃない? どうしたの?」
「それはこっちのセリフです。もしかして、ここでジャスティのライブが?」
絢巡査長がそう言うと長四郎は指をパチンっと鳴らして「正解!!」と答えた。
「で、絢ちゃん達は何しに?」
「実はこれなんです」
明野巡査が絢巡査長に送った資料と同じものを長四郎に見せた。
「臭いなぁ~」
「ですよね」と見つけた明野巡査が言う。
「他には?」
「さすがは長さん。二年前には男性アイドルが」
「男性アイドル?」
今度は絢巡査長が見つけた資料を見せた。
「それで、この男性アイドルグループ、ジャスティと同じ所属事務所なんです」
「ほぉ」
「今は、解散したみたいなんですけど。メンバーの一人から話が聞けました。それで、被害者はライブ前にファンから差し入れた飲み物を飲んで倒れたとのことで」
「凄い証言じゃない? それ」
「はい」少し嬉しそうな絢巡査長。
「あの私の方は?」
「ああ、ごめん。泉ちゃんは何か聞き出せたの?」
「それが、ここのライブハウスの人、オーナーが変わったらしいとかで」
「聞けなかったか・・・・・・」
「はい。すいません」
「泉ちゃんが謝る事はないよ」そうフォローする長四郎。
「長さん。今回の事件に関わりがあると思いますか?」
「絢ちゃんはどう思うの?」
長四郎は質問を質問で返す。
「かなり怪しいと睨んでます」
「泉ちゃんは?」
「私も絢巡査長と同じ考えです。探偵さんはどうなんです?」
「俺もお二人と同じかなぁ~」
「同じなら、勿体ぶった言い方をしないでください」
「すいません」絢巡査長に怒られた長四郎はシュンとする。
「長さんは何か掴んだんですか?」
「いいや、掴んでないよ」と自信満々に答えるので刑事二人は頭を抱えるのだった。