幻想-13
「ジギタリスがあったんですか?」
絢巡査長が長四郎にそう問うと、「ありましたよぉ~」と答える。
「犯人は、真田純って事ですか?」
「泉ちゃん、それを決めるにはまだ早いよ」
「すいません」明野巡査は謝罪する。
「何、偉そうに語ってるのよ」燐がバシッとツッコミを入れる。
「枝も折られていたんですよね?」
「うん」
「濃厚ではある訳か・・・・・・」
明野巡査は名探偵な目つきで事件を推理始める。
「姫プレイにかこつけた殺人事件ですかね?」
「そ、そうなんじゃない?」
「なんで、俺の台詞を取られたみたいな顔をするの?」
燐にそう言われた長四郎は気まずそうな顔をする。
「それよりさ、警察はどこまで調べてるの?」
長四郎は場の空気を変えるように、明野巡査に質問した。
「はい。被害者の金田さんが職場やプライベートで揉めていたということはないようです」
「え? アイドルのコミュニティはプライベートじゃないの?」燐のその純粋な発言に明野巡査は目を逸らす。
「ラモちゃん。純粋という名の武器を使うのはよしなさい」
「はい」
「動機はコミュニティのいざこざでしょうか?」
戻ってきた絢巡査長が席に着きながら質問してきた。
「いざこざ? う~ん」長四郎は天を見上げて口を窄める。
「何よ。その含みある言い方は?」
「含みある?」
「ありますよ」女性刑事二人、声を揃えてツッコミを入れる
「え~ でも、真田純が複数の男と付き合っていたのが分かったの。金田さんが殺された後だからなぁ~」
「そうなんですか?」
「そうだよぉ~ 絢ちゃん」
「探偵さんが火種になってるような気がしますけど」
「俺が? なんで?」
「だって、探偵さんが金田さんの話を聞きに行った時に真田純は複数の男と付き合っているって話したんですよね? って事は、探偵さんが話を聞かなければそのことは分からなかったんですよ」
「確かにぃ~」燐はポンッと手を叩いて納得する。
「なんか、俺が悪い感じになってない?」
「そうでしょ。あんたが話を聞きに行かなきゃ真田純もそういう事を言わなかったわけだし」
「そうなの?」
女性二人にそう聞くと、女性二人は息を合わせたようにコクリと頷く。
「マジか・・・・・・ 俺のせいなのか」
「でも、事件が起きた後の話なので」
「泉ちゃん、あんまりフォローになってないよ」
「そうなんですか?」
「そんなことないよ」と燐がすぐ様に否定する。
「そんな事より、事件の話でしょ」
「ああ、ごめん。絢ちゃん。話を戻そう」
「ホントです」
「で、ジギタリスを採取したかですね!!」
明野巡査がそう言うと、「そうだよ。泉ちゃん。今、良いこと言った」長四郎が声援を送る。
「あんた、茶化してるでしょ?」
「滅相もない。ちゃんと、事件を解決しようと考えてますよ」と口から出まかせを言う長四郎。
「ホントにぃ~」
「ホントだけど、植物の枝を折ったのが誰かが気になるな」
「普通に考えれば、真田純ですよね」
「泉ちゃん。安直すぎ」
「ラモちゃん。小説じゃないんだから」
「すいません」燐を反省するようにシュンとする。
「折った人間が誰なのか」
「いや、それが分かったとてだから。客が折ったって言われてとぼけられたら終いだから」
「うん? 待ってください。その論法だと、真田純が犯人説みたいに聞こえるんですけど」
絢巡査長が勘の良い事を言う。
「そぉ?」これまたとぼけて見せる長四郎。
「怪しい」
女子三人長四郎をじぃ~ っと見つめるのだった。