幻想-11
「なんか、凄い話だったね」
ビルから出てきた燐の第一声はそれであった。
赤座から真田純の素行を聞いた燐の感想はそれであった。純は赤座を口説き落として、かなりの金と物を貢がせたということが分かった。
「ま、姫プレイにはあることじゃないか?」
「探偵さん。アポ取れました」
先にビルを出ていた明野巡査が長四郎の元へ駆け寄りながら、そう告げた。
赤座の紹介で、別アイドルのコミュニティの人間を紹介してもらい明野巡査がその人物にアポイントを取っていった。
「泉ちゃん。サンキュー じゃ、行こうか」
「はい」と返事をする明野巡査。
「泉ちゃんはさっきの話を聞いてどう思った?」
「どうしたの? 急に?」
「同じ女性として、さっき聞いた話がどうも気になってさ」
「泉ちゃん、ラモちゃんが言いたいのはね。半分、詐欺みたいな事をしている女じゃないかってこと」と長四郎の解説が入る。
「う~ん、どうだろ?」
「どうだろうって・・・・・・」明野巡査は何、怒っているんだろうみたいな顔をする。
「ラモちゃんはこういう貢がせる系の女が嫌いなんだよ」
「ああ、そういう事ですか」
「何がそういう事よ。だって、ムカつくでしょ? 散々貢がせて置いてポイ捨てなんて」
「アイドルやっている奴が言うことかよ・・・・・・」
「どういう意味?」
「だって、そうだろ? 握手やチェキで金を稼いでいるんだから」
「探偵さんの仰る通り」明野巡査は感心しながら、駐車場の駐車料金を支払う。
「でしょ? これで、アイドルに彼氏なんか出来た日にゃ、貢いだお金はパァ~ だ。」
「ファンの人達は私達と付き合えるとなんて思ってないし」
「ラモちゃんはホント男という生き物を理解してないな」
長四郎はそう言い放ち、明野巡査が乗ってきた覆面パトカーに乗りこむ。
「どういう意味!?」燐は憤慨しながら、後部座席にドカッと座りシートベルトを締める。
「ああ、もうっ! 二人とも喧嘩しない!」
明野巡査に怒られた二人は「すいません」と声を揃えて謝罪するのだった。
こうして、三人を乗せた覆面パトカーは文京区にあるオフィスビルへと向かった。
「どうも、戸増です」
赤座の紹介された人物である戸増は、三人に名刺を渡す。
その名刺は会社のものではなく、個人用の名刺で推しのアイドルのイラストがプリントされた結構派手な名刺であった。
「どうも、私立探偵の熱海と申します」
長四郎は自己紹介し、「助手の羅猛です」と燐が続いて挨拶する。
「警視庁の明野です」
明野巡査は名刺交換をする。
「それで、私に聞きたいことというのは?」戸増は本題を切り出した。
「はい。この女性をご存知ですか?」
長四郎はジャスティのメンバーに見せたコミュニティの写真を見せながら質問した。
「ああ、真田さんですね。存じてますよ。真田さんが何か?」
「いや、どういった方かなと」
「そうですね。彼女は、男を手玉に取るのが得意でしたね」
「得意ですか」
「はい。そのおかげで以前、参加していたコミュニティは散り散りになってしまいましたがね」
「やっぱり、男を食い漁っていたんですか?」
「ラモちゃん」
ド直球な質問をする燐を諌める明野巡査。
「ええ、そうです。皆、仲良かったんですけどね」残念な顔をする戸増。
「失礼ですが、戸増さんは彼女とお付き合いは?」
「私、こう見えても結婚しておりまして、そのような事は。でも、危うくターゲットになるところではありましたが」
「それはコミュニティが解散する前ですか?」
「ええ、大方のメンバーは食い物にされた後で。彼女はしたたかですよ」
「そうですか。それだけ食い物にしていると、有名だったんじゃないですか?」
「ここ最近、認知されてきたといった感じでしょうか」
「成程、分かりました。ありがとうございました」と礼を述べた後に「最後にもう一つだけ」と質問をする長四郎。
「何でしょうか?」
「彼女の勤務先は分かるでしょうか?」
「ここの近くですよ。小石川植物園です」
「小石川植物園ですね。ありがとうございました」
長四郎は女性二人を引連れ、小石川植物園へと場所を移した。