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探偵は女子高生と共にやって来る。(感謝150,000PV達成)  作者: 飛鳥 進
第参拾参話-幻想
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幻想-4

「AED持ってきてください!!」

 明野巡査がそう客に指示を出し、その間も一生懸命に心臓マッサージを続ける。

「はい。秋葉原のライブハウスです」

 絢巡査長はその傍らで、消防に通報している。

「ちょっと、どいて!!」

 客を押しのけ燐はステージから降りて、倒れた金田に近づき疲れを見せ始める明野巡査に「変わる」と心臓マッサージを変わって行い始める。

 すると、客達は「うぉぉぉぉぉ」と感嘆の声を出す。

「うぉぉぉぉぉじゃねぇよ!! てめぇらも手伝え!!」

 燐にそうしかりつけられてた客達は、大慌てで通報しようとし始める。

「違う。違う」

 長四郎はそう言って、割って入り燐から心臓マッサージを変わる。

「あ、あんた!? なんで」

「その質問はもういい。それより、息しているか確認してくれ」

「分かった」長四郎の指示を受けて燐は金田の口元に耳を当てるとまたオタク達が「うぉぉぉぉぉ」と声を上げる。

「ダメ。息してない」

 それでも、長四郎は心臓マッサージをリズムよく行い、心臓が動いたか定期的に確認しては再びマッサージを続ける。

「救急隊員が来ました!」

 スタッフの一人が救急隊員を案内しながら、客達をどかしていく。

「今の状況は?」

 救急隊員は金田の状態を確認する。そして、明野巡査がこれまでの経緯を救急隊員に説明し、そのまま搬送されていった。

「え~ お客様に申し上げます。本日のライブは中止とさせて頂きます」

 運営スタッフの案内の通り、公演は中止となり客達は残念だという声を出しながら帰路につくのだった。

 長四郎もそれに続こうとするが、がっと首根っこを掴まれそれを阻まれる。

「どこ行くのかなぁ~」燐はそう言いながら、ジタバタとあがく長四郎を逃がさまいと鳩尾に軽いパンチをする。

「痛っ! ファンの目の前でそんなことして良いと思ってるのか?」

「ふっ、甘い。もう客は一人も居ない」

 燐にそう言われた長四郎は周囲を見渡すと、運営スタッフが片づけを始めていた。

「マジか」

「マジよ。それより、気にならなかった?」

「気になるって。ああ、ラモちゃんがアイドルやっていること」

「そっちじゃない。倒れたファンのこと」

「気にならないね」と答えつつ、長四郎は客を早々に帰して良かったのか。と少し思っていた。

「あの人、病気な感じじゃなかったよね?」

「そうなんだ。俺、仕事があるから帰る」

「何が仕事よ。絢さんか泉ちゃんに聞きつけて私を見に来たくせに」

「たっかい金払ってラモちゃん見るほど、俺は暇じゃないの」

「なんか、ムカつく。な!」燐は長四郎の脛を蹴る。

「ほぶっしっ!!」

 突然の痛みに変な声を出して、長四郎はその場に崩れ落ちる。

「茜ちゃ~ん、着替えよう」舞台袖の入り口から、ひょっこり顔を出した春恵が燐に声を掛ける。

「分かったぁ~ 今、行く。良いか、逃げんなよ」

「は、はい」

 痛みに耐えながら長四郎は今できる精一杯の返事をするのだった。


 病院に搬送された金田は死亡が確認された。

 あれだけ、救護処置をしたのにも関わらず救命できなかったことに悔しがる明野巡査に絢巡査長は声を掛けた。

「泉ちゃんのせいじゃないよ。それに、救急隊員の人はもっと辛い経験をしてきているんだから。それにこれからもっと辛い経験が降りかかってくるかもだよ。こんな所で凹んでいたらやってけないよ」と。

「そう。ですよね。私、警官向いてないのかな」涙を滲ませながら明野巡査はボソッと呟いた。

「そんなことないよ」と言いつつ、絢巡査長は失敗したそう思った。

「すいません。警察の方ですか?」そう看護師に声を掛けられる二人。

「はい。そうですけど」絢巡査長より先に明野巡査が答えた。

「実は先生からお話があるとのことで、少し宜しいでしょうか?」

「はい。分かりました」女刑事二人は声を揃えて快諾した。

 二人は診察室に通され、そこに救急外来を担当する医師の意思(いし)が待っていた。

「どうも、ここで救急を担当している意思と申します」

「警視庁の明野とこちらは絢です」と明野巡査が二人分の自己紹介をした。

「お二人をお呼びしたのには、先程、運び込まれた患者さんについて事件性が疑われるからでして」という言葉に二人は顔を見合わせて驚くのだった。

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