幻想-3
「げっ!?」
長四郎は偉い所を見られたみたいな顔をする。
「げっ!? って、なにも驚く必要ないでしょ?」そんな顔するなよ。みたいな顔の絢 小町巡査長。
「そうですよ。探偵さん」と明野 泉巡査も絢巡査長の言う通りだという反応をする。
「何で、二人がここに?」
「え? 長さんもラモちゃんのライブ見に来たんですよね?」と絢巡査長が言うと長四郎は大きく首を振る。
「嘘っ! てっきり、ラモちゃんが誘ったと思った」
前回は、燐ちゃん呼びだった明野巡査もラモちゃん呼びに戻った。うんな事より燐に誘われたことが重要なのだ。
「誘うって何?」
「知らないんですか? 今、ラモちゃん。アイドルとしてライブに立っているんですよ!」
「知らないよ。絢ちゃん。てか、泉ちゃんも知ってたの? いつから」
「先週だったかな? ラモちゃんからお誘いのメッセージが来て。てか、探偵さん。アイドルの趣味があったんですね」
「無いわ! 失礼だね。泉ちゃん」
「無いのに来た方が不思議なんですけど」
「察しなよ。何で俺が来たのか?」
「仕事だって言うんですか?」
「泉ちゃん。その疑いの目は何よ。絢ちゃんも」
女子二人からの訝しめな視線に狼狽えていると「生ビールです」とバーカウンターに注文した生ビールが置かれる。
「とにかく、俺、仕事なんだからね。ぷんぷんっ」
長四郎は頬を膨らませてライブ会場に戻って行った。
「どう思います?」
明野巡査にそう聞かれた絢巡査長は「嘘だね」と長四郎の発言を一蹴した。
程なくして、ライブが始まった。
ライブ会場にアイドルの歌のイントロが流れ始める。
そして、アイドルの子が五人、ライブステージの横にある出入り口から「宜しくお願いしまぁ〜す!」と言いながら登場した。
アイドルオタク達は、各々ペンライト片手に推しのアイドルの子に声援を送る。
その光景に、長四郎は圧巻の目を送る。
各々と言ったが、その動きは綺麗に統一されておりかつ声援の声の方がアイドルの子達が歌声より大きく長四郎は歌がよく聞き取れなかった。
それより、自分の仕事を行うことが優先事項である。長四郎はカメラ小僧と一緒にアイドルを撮影するふりをしながら対象の獲濡剛士の姿を写真に収めていく。
1グループ目が二曲歌いトークコーナーがあり、もう二曲歌い捌けて行った。
そして、次のグループが出てきた途端、「キェェェェェェ!!」と奇声を上げる客が一人居て長四郎は思わずカメラを落としそうになる。
「あっぶねェ〜」その客をチラッと見た後、視線をステージに向けると歌いながら笑顔でダンスする自称助手である羅猛 燐の姿があった。
「マジか・・・・・・」
長四郎は絢巡査長とかの話を鵜呑みにしてなかったが、この光景を見て本当だったのだと信じた。
そして、踊りと歌に夢中になっている燐にカメラを向ける長四郎は不敵な笑みを浮かべる。
そして、二曲歌い切った後にトークコーナーが始まる。
「今日は、クイズをしたいと思いますぅ〜」
アイドルグループ・ジャスティの猿担当、透 明子がコーナー内容を発表する。
「イントロドンじゃなくて、アウトロドンでぇ〜す!」
鬼担当の貫 花がそう言うと、「え〜 できるかなぁ〜」とリーダー兼桃担当の桃田 春恵が困惑の反応する。
「自信ないなぁ〜」犬担当の坂本 樹が頭を抱える。
真打の雉担当の源氏名・神楽 蘭こと羅猛燐が口を開いた。
「私、加入したばっかだけど、一番自信ある〜」
普段の強気はそのままに可愛こぶって喋る。
それを聞いた長四郎は「見せてもらおうか。可愛こぶっている女の性能とやらを」と呟いた。
「では、スタート!」
透明子がスタートの合図で曲が流れる。
「はいっ!!」
いの一番に手を挙げたのは、神楽茜こと燐。
「Play」
「正解!!!」
正解のピンポンが鳴る前にオタクが叫んだ。そのすぐ後に正解のピンポン音が流れた。
「スッゴォ〜い」春恵が手を叩き、感激の声を出したその時に、客の一人が卒倒して倒れた。
その客は、長四郎に声を掛けてきたオタクこと金田であった。
「大丈夫ですか!!」
すぐにすっ飛んでいく絢巡査長と明野巡査は救護活動を始めた。
「また、このパターンか・・・・・」
長四郎は困ったみたいな顔をするのだった。