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探偵は女子高生と共にやって来る。(感謝150,000PV達成)  作者: 飛鳥 進
第参拾参話-幻想
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幻想-2

 地下アイドルのライブ開演までの間、対象の剛士にカメラを向けることができなかった。

 その理由は、ライブ前の出待ちな客が30人程居り、こんなところでカメラを向けるのは怪しさ全開でスマホのカメラを定期的に隙を見ては撮影する。が、どれもブレており証拠写真としては体を成していなかった。

 長四郎は新規の客として、取り敢えずライブ開演まで待つことにした。

 そんな長四郎を他所に、調査対象の剛士は嬉々として同じアイドルファンの客と談笑していた。

「50近くのおっさんが、20代の姉ちゃんに貢ぐ。新手のキャバクラみたいなもんだな」

 長四郎は偏見じみたことを呟きながら、剛士の会話に聞き耳を立てる。

「のんたんの生誕祭なんで、搬入の時に花を差し入れておきました」

 剛士より少し、ほんの少し若い男性が出来上がったコミュニティで報告すると「お〜」と取り巻きのおっさん連中から拍手が上がる。

「にしても、戸塚(とつか)くん。来てないな」

西(にし)さんも」

 常連の客が来てないことに、コミュニティのおっさん達は周囲をキョロキョロと見回す。

 こんなところで、生存確認している客を見て長四郎は感嘆した。意外にも、コミュニティ―としての機能を成しているからだ。普段、ライブに顔を出す客は一定数決まっているらしくそこで推しについての情報を共有したり生存確認したりとまぁ、色んなことを話すのだろう。

 長四郎がそんな事を考えていると「のんたん推しですか?」と声をかけられた。

「の、のんたん!?」長四郎は自分が話しかけられるとは思わず、びっくりした。

「ええ、のんたんです。生誕祭の」

「ああ、僕は知らない世界を知ってみよう的なアレでして」

 苦し紛れに変な回答をする長四郎に声をかけたオタクは「探偵さん?」と急に芯をついてくるような質問をぶつける。

「いえ、探偵じゃありませんよ」

「でも知らない世界を知ろうって調査って事でしょ? つまりは探偵じゃないですか」

 鋭いのか偏屈なのか、何にせよ長四郎はこのオタクに戦々恐々していると「金田さん。新規のお客さんが困ってるでしょ?」と調査対象の剛士が助けてくれた。

「獲濡さん。ごめんね」

「お兄さんも驚かせてごめんね」

「いえいえ、こちらこそ助けて頂いてありがとうございました」

 あ〜 顔を覚えられたな長四郎はそう思いながら、礼を述べる。

 すると、ライブハウスから運営スタッフが出てきて、「整理券を配りまぁ〜す」とアナウンスするとアイドルオタク達は、コミケの始発ばりスタッフ目がけてダッシュする。

「うわぁ〜 まじかぁ〜」

 一番手に整理券を入手した客が悔しがる声を出す。

「何番?」

「32」

 オタク達は口々に自分の番号を見せ合いっこする。

 長四郎はオタクたちがはけた後に、整理券を受け取りにいく。

「44か・・・・・・」

 これが良い数字なのか。どうか、長四郎はよく分からなかったが人数的には30人程なので末尾の番号であるのは間違いなかった。

「では、入場料をご用意の上、整理券一番の方から入場してください」

 スタッフのアナウンスをきちんと守り、オタク達は入場料を用意し、きちっと番号順に並び入場の手続きを踏んでいく。

「ようやく。か・・・・・・」

 長四郎は待ちくたびれたと言わんばかりに首をバキボキと鳴らして列に並ぶ。

 2,3分も経たずに入場口に到達した長四郎は、入場料+ドリンク代の入った3,200円を支払う。その際、受付のスタッフに「推しは?」と聞かれ「い、居ません」と素直に答えた長四郎にイラッと来たのか、チェックシートに辛辣な感じで推しなしの欄にチェックを入れられ少し複雑な気持ちになる長四郎であった。

 開演前に、各々陣地に荷物を置いていく。長四郎もその例に倣いライブ会場の隅に陣地をとり、動線の邪魔にならないような場所に荷物を置き、ドリンクをもらいにいくことにした。

 会場を出てすぐのところにバーカウンターがあり、オタク達は各々好きな酒を頼む。

 長四郎も生ビールを注文し出来上がるのを待っていると「長さん?」とそこそこ聞き慣れた女性の声がしたのでそちらを向くと、(あや)巡査長と明野(あきの)巡査の二人が居た。

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