隠密-5
燐は生徒が運び込まれたという大学病院を訪れた。
「あのぉ~ すいません。私、変蛇内高校の生徒なんですけど。先程、ここに運び込まれた生徒さんのカバン持って来たんですけど」
入口の案内カウンターにいるスタッフに持って来たカバンを見せながら燐は尋ねた。
倒れた生徒の介抱している時に薬を出したと同時に出てきた生徒手帳を見た燐は勝手にその生徒のカバンを持って病院へと向かったのだ。
「運び込まれた?」
「はい。そのはずですが・・・・・・」
「少々お待ちください。確認致します」そう言って内線で確認を取り始めたので燐は「お願いします」とお辞儀をしてお願いをする。
そして、すぐに「確かに搬送されてました。今、救急救命センターに居ますので、そこに届けてあげてください。スタッフに声を掛けて頂いたら分かりますので」
「分かりました。ありがとうございました!!」
深々とお辞儀をした燐は、救命救急センターに移動した。
ここには、都内各地から運び込まれてくる命にかかわる患者達でひしめき合っていた。
「なんか、事故でもあったのかな?」
慌ただしくフロアを早歩きで移動しまくる医療スタッフ達に声を掛けずらいなそう思っていると「すいません。どいてください!!」燐は背後からそう言われ咄嗟に避けて「すいません・・・・・・」と謝罪し運び込まれてきた人に目を向けると他校の制服を着た泡を噴き痙攣した生徒が運び込まれて処置室へと入っていった。
「にしても、参ったな。今日だけで30人だぞ」
続いてきた制服警官がそう同僚に愚痴をこぼすのが聞こえた。燐は、ちょっと聞き耳を精神でその警察官の会話に耳を傾ける。
「ああ、都内各地だもんな。何がどうなっているのかねぇ~」
その後すぐに、無線が入ったらしく警官たちは去っていった。
「都内各地・・・・・・」
「貴方、そこで何してるの?」看護師が燐に声を掛けてきた。
「あ、すいません。ここに運び込まれた子のカバンを持って来たんですけど・・・・・・」
「そうだったの。誰か分かる?」
「変蛇内高校の生徒です」
「ありがとう。届けて置くわ」
「ありがとうございます。すいません。一つ聞いて良いですか?」
「何かしら?」
「今日、パンデミック的な何かがあったんですか?」
「そうね、急になんだけど同じ症状の高校生達が運び込まれてね」
「大変ですね。すいません。手間を取らせてしまって。失礼します」
燐は早々に切り上げ、この事を手土産に警視庁へと向かった。
警視庁を出た長四郎は、新宿歌舞伎町に来ていた。
「薬の類は、ここに限る」
長四郎はそう言いながら、歌舞伎町ゲートをくぐってすぐのビルに入っていく。
エレベーターもないビルの階段を上がり目的の階まで上がる。
「ひぇぇぇぇ、年居る波には勝てないか・・・・・・」
長四郎は山手イノベーションというテナントのドアを開けて中に入る。
「むぐほっ! ゲホゲホっ!!」
部屋の中には長い間積もりに積もった埃と汁の残ったカップラーメン、ペットボトル、缶コーヒーなどの凄い異臭が長四郎を襲い思いきっりむせる。
「相も変わらず汚い部屋だな・・・・・・」
長四郎はゴミを蹴飛ばしながら、オンラインゲームに興じる男に声を掛けた。
「それを言う為だけに来たんじゃないだろ?」
敢えて、ゲームオーバーにして長四郎に返事するのは、長四郎の高校時代の同級生で今は山手イノベーション社長の金田一 小五郎である。彼はこの新宿に根を降ろし、ありとあらゆる情報を握るそんな人物なのだ。
「お前さんの知りたい情報は、これだろ」
ホッチキス止めした冊子を長四郎に投げ渡す金田一。
「おう、これこれ。トォォルン。これが違法薬物の名称か」
「そう。それがまぁ、めんどくさい代物でな」
「そうなんだ。それよりもさ、河岸を変えないか?」
長四郎はここの環境に耐えられず、場所移動を提案した。