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探偵は女子高生と共にやって来る。(感謝150,000PV達成)  作者: 飛鳥 進
第参拾壱話-誤報
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誤報-19

「まず最初に、こちらをご覧ください」

 絢巡査長の手から一枚の紙を受け取る長四郎。

「これは、死亡推定時刻の少し前に撮影された防犯カメラ映像の静止画です」

 そこに映っていたのカジュアルスーツに身を包んだ玉原の姿であった。

「そして、次にお見せするのはこれです」長四郎はそう言って絢巡査長からもう一枚の紙を受け取って玉原に見せた。

「死亡推定時刻後に撮られたものです。場所も倉庫の勇逸の出入り口で撮られたものではなく正面玄関で撮られたものです」

「だから、何なんだ?」

「鈍い人だねぇ~」長四郎は、おばちゃん口調で玉原を煽る。

「あんた、服着替えてるじゃん。しかも、別の入口から急に姿を現しているし」

「そ、それは・・・・・・」

「それは?」長四郎がオウム返しで尋ねると、玉原を除く三人も興味深そうに玉原を凝視する。

「それは、恥ずかしい話だが、漏らしたんだ」

「だそうですけど、長さんの見解は?」一川警部が長四郎の意見を請う。

「はい。ダウトぉ~ 着替えた事を認めた時点であんたの言い訳が意味をなさないのが分かんないのかねぇ~ あんた、出雲伊緒さんを殺害した後、返り血を浴びたのか。倉庫に置いてあった服に着替え非常口から出てぐるりと回って正面玄関から入り直した。トイレと間違えて倉庫に入ったなんて言うのは無しでお願いしますよ。あ、脱いだ服は」

「倉庫に吊るされていたのを発見しとります」

 一川警部が長四郎に続いて説明しながら、脱いだ衣類を写真に納めたスマホを玉原に見せた。

 玉原は身をプルプルと震わせながら、震えた声でこう漏らした。

「あ、あいつが行けないんだ・・・・・・」

「あ?」

 燐はここまで来て他人のせいにしようとする玉原に怒りが湧いた。

「あいつが、あのプロデューサーを殺すからこんなことになるんだ!! 俺は、悪くない! 噓じゃない!! 本当だ!!!」

「それはないんじゃない? 元の原因は、あんたでしょ?」燐は玉原に掴みかかろうとするのを長四郎によって羽交い締めされ制止させられる。

「確かに出雲伊緒さんのした事は決して、褒められる事ではありません。が、自分に原因があるにも関わらず白を切るとは何事だ!」長四郎にしては珍しく犯人を怒鳴りつけた。

「お、俺は何も何も悪くない。そうなんですよ。刑事さん」

 一川警部や絢巡査長に身の潔白を訴えるが二人共、聞く耳を持たない。

「まさか、本当に自分が殺した出雲伊緒さんが誰なのかを知らないの?」燐がそう聞くと、玉原は頷いて答える。

「あんたが昔に犯人扱いして追い回した出雲園さんの家族だよ」長四郎がそう言うと、「そうか。あの時の・・・・・・」玉原は黙ったかと思えば今度は急に高笑いし始めた。

「あいつ、あいつの家族が。やっぱり、犯罪者だったんじゃないか! 犯罪者の家族だから俺を貶める為に今度の事件を起こしたんだ。そうだ。そうに違いない。俺は間違えた報道をしていなかった! ハハハハハハハハハハっ」

 玉原の笑い声が虚しくスタジオに響き渡るのだった。


「全く、とんだ元旦だったぜ」

 テレビ局から出てきた長四郎はそう毒づいた。

「それはこっちの台詞だし。あんたが来なきゃ事件は起きなかったかも」

「事件が起きたら起きたで、俺を呼び出す癖に」

「バレてた?」

「バレバレでございますよ。あ~ 寒っ」

 元旦の空っ風が長四郎達を吹きすさぶ。

「本当に寒っ!!」

 気づけば夜になっており、寒さも一層に厳しいものとなっていた。

「で、どうする?」燐にそう聞かれた長四郎は「帰るよ」と即答した。

「どうせ、帰っても一人酒なくせに」

「悪いかよ」

「折角、回らないお寿司を奢ろうと思ったのに」

 その一言に長四郎は目の色を変える。

「今年も何卒宜しくお願い致します!!!」長四郎は直角にお辞儀をする。

「もう遅い。気が変わった」燐は一人そそくさと歩き出す。

「そんなこと言わずにお願いしますよぉ~」

 そんな年下にへこへこする情けない言葉を発する長四郎の新年は始まるのだった。


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