誤報-18
「それは、スタジオにキャリーケースが運び込まれた時です」
そう長四郎はキャリーケースがステージに持ち込まれた際、異様に重そうなキャリーケースを引いるのを見て中身が入っているにせよ重いキャリーケースに違和感を覚えたのだ。
「そんなに早く・・・・・・」燐はなんでもっと早くに言わないんだそう思った。
「そうですか。ありがとうございました」
三澤は長四郎に礼を述べ「こちらこそ」と長四郎もまんざらでもないみたいに顔をしながら答えた。
「ちょっと! 出雲伊緒さんを殺した犯人は? 忘れてない?」
「忘れているのは、ラモちゃんだけだよ」
「そう、そう」
長四郎の発言を肯定する一川警部を燐は睨み付ける。
「一川さんに当たるんじゃないよ。さ、犯人に話を聞きに行こう」
「犯人って、誰?」
「読者の皆様はもうお気づきだろうなぁ~」
長四郎はそう言って、大会議室を出ていった。
「皆さん、こんばんは。玉原南海です」
回ったカメラに向かってそう挨拶する玉原は「本日、このテレビ局で悲痛な事件が起きました。私も現場に居ましたがとても辛い体験で、殺害されたプロデューサーそして被害者遺族に哀悼の意を捧げたいと思います」そう言って、目を瞑った。
二十秒程黙禱した後、玉原は再び語りだした。
「ここで、速報です。今朝の事件の犯人が逮捕された模様です」
カンペに次の指示が書かれる。
「中継があるようです。中継先の熱海さん」
「はい、こちら中継先の熱海です」そう言いながら、玉原南海の背後からすっと姿を現した長四郎と燐。
「少しアクシデントが起きたようです。中継先の熱海さん」
自分に近寄ってくる探偵と女子高生の二人を無視して、再度、中継先に居るであろう熱海を呼び出そうとする。
「はぁ~い。熱海でございまぁ~す」長四郎はサザエさん口調で返事をする。
「邪魔しないで頂けますか? 生放送中ですので」怒りのあまり顔を引きつらせている玉原はふざけたおす長四郎を諌める。が、読者の皆様もご存知の通り長四郎はそんな事に動じる男ではない。
「その生放送で犯人を暴露しようっていう魂胆が読めないのかね? どう思うラモちゃん」
「読めてないね。こんなに面白い生放送はないのに。勿体ない」
「報道番組を馬鹿にしているのか?」
「馬鹿にしているのは、あんたでしょ? 玉原南海!」
燐は、犯人は貴方だ!! と探偵が犯人を指さすポーズを取り玉原を恫喝する。
「私が報道を馬鹿にしている? どういう意味ですか?」
「人殺してよく平然とした顔でカメラの前に立ってる事、それ事態が馬鹿にしてるって事よ!」
「君は私が人を殺しているそう言いたいのか? 名誉毀損で訴えますよ。今すぐその発言を撤回しなさい!」
「嫌だ」燐は即答する。
こんなやり取りを地上波に乗せるわけにはいかない。玉原はカンペを出すADにCMはまだかの視線を送るがそこには先程までいたスタッフ達が姿を消していた。
「ど、どういう事だ!」
「そういう事ですよ。今、別のスタジオで差し替え番組が生放送されてますよ」
長四郎はそう言って、出演者用のモニターのチャンネルを変えるとモニターに玉原が行うはずだった番組が映し出された。
「ね?」
「私が誰を殺したというんですか?」
「お、やっと本題に入ってくれましたね。お答えしましょう。殺害されたのは、貴方へ復讐しようとした殺人犯です」
「その言い分だと正当防衛のように聞こえますが」
「素直に届け出ればの話ですがね。だが、貴方はそれをしなかった。何故か? 自分の保身に走ったというより返り討ちした。それが俺の推理です」
「その根拠は?」
「だって、計画的なんですもの。玉原さんが倉庫に入っていく姿は防犯カメラ映像に映っていてもそこから出てくる姿は映っていないし、防犯カメラに映らないように倉庫を出て正面玄関から入ってくる時間は映っていましたしね。しかも、ご丁寧にお洋服を着替えていた」
「それだけで、私が殺したと?」
「そうですよ」
長四郎がパンパンと手を叩くと一川警部と絢巡査長がスタジオに入ってきた。
「では、証拠がありますので順を追って説明しましょう」