誤報-13
「被害者の名前は、出雲 伊緒。年齢は、今年で25歳みたいですね」
免許証を見ながら絢巡査長は、一川警部に報告する。
「出雲って、あの炎上事件の家族なんですかね?」
「そうかもね。ラモちゃん」
「やっぱり、こん人が最初の事件の容疑者なんやろか?」
「可能性は高いと思います」燐がドヤ顔で一川警部の疑問に答える。
「それよりも気になるのは、なんでこの人が殺されたのか? じゃ、ありません?」
絢巡査長は首を傾げながら、二人に問う。
「仲間割れとか?」燐が真っ先に答えた。
「ええっと、じゃあ、あたしは別の殺人とか?」
「言い出したもん勝ちじゃないから」
絢巡査長は呆れて物も言えないといった感じで首を竦める。
「犯人はどうやって逃げたんだろう」
「それよ。いくら人の出入りが激しいからって、人を殺して早々に逃げれるかなぁ~」
「絢ちゃん。今日は冴えとらん? どうしたと?」
「一川さん、絢さんを茶化さないでください。ここに居ない私立探偵が役に立たないんですから」
その役に立たない私立探偵こと熱海長四郎はというと・・・・・・
「防犯カメラ映像ですか?」
監視モニター室の警備員が長四郎に問うた。
「はい。事件解決の為、ご協力願います」
長四郎は敬礼しながら、お辞儀をして頼み込む。
「分かりました」渋々ながら、長四郎の頼みを了承した。
「ありがとうございます」
勝ち誇ったようにニッと笑う。
「それで、見たい場所と時間を教えてください」
警備員はノートパソコンにデータを入力する準備をしながら、指示を請う。
「場所は、倉庫の出入り口。時間は今から、二時間前でお願いします」
的確な指示で良かったそう思いながら、警備員は指示に従ってデータを入力。そして、該当の時間の防犯カメラ映像を再生する。
そこに映し出された映像を倍速のスピードで視聴しながら長四郎は犯人らしき人物が映って居ないのか。何度も、何度もループ再生しながら視聴をして15分が経過した頃、口を開いた。
「ありがとうございました。今度は倉庫内の防犯カメラ映像を」
「あ、はい」
警備員は同時間プラスアルファの時間帯で倉庫内の防犯カメラ映像を見せる。
だが、倉庫内の防犯カメラ映像は繰り返し再生せずに動画を停止させた。
「一つお聞きしても?」
「何でしょうか?」
「倉庫の奥に非常口があるのはご存知ですか?」
「え? そんなのあったかな?」同僚の警備員に聞くと「知らない」という返答が帰ってきた。
「でしたら、この建物の警備マップを見せてもらえませんか?」
「はい。分かりました」
警備員は椅子から立ち上がり、マップを取りに行く。
「探偵さん。犯人映ってました?」別の警備員が興味本位で質問してきた。
「映っていなかったですよ。残念」
「そうですねぇ~」
「持ってきましたよ。マップ」
「ありがとうございます」
警備員はマップを机に広げた。長四郎はすぐに目を通す。
「あ、非常口あるよ!」マップを持ってきた警備員が同僚に教える。
「ここに防犯カメラは・・・・・・」
非常口の先に外へ通ずる非常階段に繋がっており、そこから犯人が逃亡したそう長四郎は考えていた。だが、長四郎の期待通りに事は運ばなかった。
そう防犯カメラが非常階段に設置されていなかったのだ。
「参ったなぁ~」長四郎は金田一耕助ばりに頭をボリボリと掻き、ふっと今現在流れている防犯カメラのライブ映像に目を向ける。
「お! おやおや」
そこに映っていたのは、フリーアナウンサーの玉原南海がテレビ局の廊下をお供を引き連れながら闊歩している姿であった。
「どうも、ありがとうございました!!」
長四郎は警備員達に礼を言い、警備室を出ていった。