誤報-8
「はい。命捜班」
内線に出たのは、命捜班第二班の遊原巡査であった。
「遊原君、一川です」
「明けましておめでとうございます」
「はい。明けましておめでとう。そんで、遊原君、今、暇よね?」
「まぁ、そうですけど」
遊原巡査は命捜班・第二班の部屋で一人待機状態であった。上司の佐藤田警部補、同僚の明野巡査は正月休みを取っており自身も正月休みを取れる事も出来たのだが、実家に帰る気もならずこうして出勤し待機していた。
「頼まれて欲しい事があるんやけど」
「何です?」
「実はうんぬんかんぬんでね」
「了解しました。今すぐ、調べます」
「宜しくぅ~」
通話を終了した遊原巡査は早速、行動を開始した。
「何故、帰ってはダメなんですか?」玉原は長四郎に詰め寄って問い詰める。
「事件解決の為に決まってるでしょうがっ!」長四郎は武田鉄矢風に答えると、当然、玉原の逆鱗に触れ「帰る!!」と突っぱねられてしまうのであった。
「あ~あ。怒らせちゃった・・・・・・」
ズケズケと廊下を歩いて去っていく玉原を見送りながら、燐はそう言った。
「殺されても俺、知らねぇ~っと」
「無責任な探偵ね。で、これからどうするの?」
「スタッフだな」
「スタッフ?」
「そう、スタッフぅ~だよ」今度は狩野英孝風に答える長四郎。
「じゃ、一川さんに頼もう。あの番組のスタッフを集めてもらおう」
燐はすぐに一川警部に電話をして、スタッフを集めてもらう算段を取ってもらった。
会議室へと集められたスタッフ一同は、何故、呼び出されたのか分からず困惑していた。
「失礼しまぁ~す」
一川警部が長四郎、燐、絢巡査長を連れて会議室へ入ってきた。
「お、皆さんお揃いのようで何よりです。事件解決の為にご協力をお願いしたいとです」
「それは構いませんが、私達に何をしろと?」
スタッフを代表して番組プロデューサーの志村が発言した。
「大した事ではないんです。この人から質問があるので答えて欲しいとです。では、長さん。宜しく」
「はい。お聞きしたい事が二、三ありまして。では、一つ目の質問から」と長四郎は話し始めた。
「今、この部屋に居るスタッフの皆さんは報道番組のスタッフを担当されているもしくは過去に担当されていた方は挙手して欲しいのですが」
その質問を受け五人のスタッフが手を挙げた。
「では、手を挙げられた方にに聞きます。フリーアナウンサーの玉原南海さんの番組に携わった方は挙手を?」
五人のスタッフの内、三人のスタッフが挙手した。
「ありがとうございます。では、最後の質問です。これはスタッフの皆さんにお聞きしたいのですが玉原さんの私物であるキャリーケースを手配されたのはどのスタッフさんでしょうか?」
その質問を聞いていた燐は確信に触れたな、そう思った。
先程、挙手した三人がそのままの状態で自分達である事を示した。
「ありがとうございました。では、三人の方は残って頂いて。ああ、決して残った方が犯人ではありませんので、悪しからず。ご協力ありがとうございました」
長四郎は残った三人をフォローする一言を言いつけ、他のスタッフを会議室から退室させた。
「お忙しい中、残ってもらってすいませんね。自己紹介からお願いできますでしょうか?」
残った三人に長四郎は自己紹介を求めた。
「はい。私は番組のADを勤めております鵜崎と申します」
「鵜崎のアシスタントを勤めております龍頭と言います」
「番組の小道具を担当する廣宮です」
三人は自身の紹介を終えるとペコリと頭を下げた。
「ご丁寧にどうも」
長四郎はそう答えながらあることに気づいた。
番組が始まる前に長四郎にエチケット袋をくれようとしていたADの姿がない事を。