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将軍-2

 警視庁へ連れてこられた長四郎と燐が向かった先は、いつも行く命捜班の部屋ではなく多くの警察官達がひっきりなしに出入りする大会議室であった。

「探偵さんを連れてきました」

 遊原巡査は大会議室の中央でせわしなく報告書の目を通す長四郎とあまり年の変わらないエリート官僚に報告した。

 うん。そう返事しながら報告書から顔を上げて、長四郎の姿を拝もうとする。

 が、その場に長四郎はおらず、事もあろうに捜査本部でお茶出ししている小柄で童顔の庁内でモテまくっているであろう女性警官にナンパしていた。

「君、捜査に参加してないの?」

「いえ、私は」

「え~ 絶対に参加した方が良いよぉ~」

「そ、そうですかね」愛想笑いを浮かべる女性警官。

「そうだよ。君の美貌をもってすれば事件は万事解決。めでたし、めでたしだよ」

「あんた、それでナンパしているつもり?」燐はそう言って、長四郎の後頭部にチョップを叩き込み「お仕事の邪魔してごめんなさぁ~い」女性警官に謝罪し長四郎の首根っこを掴み遊原巡査と明野巡査が居る場所まで移動する。

「すいません。連れてきました」燐がそう言うと「連れて来られました」と長四郎痛む後頭部を手で抑えながらお辞儀する。

「君か。熱海とかいう探偵は?」

「左様です。私が熱海とかいう探偵です。そんで鼻に付くそちら様は?」

 長四郎の言葉に眉を上げ、少し怒ったようにも見えたがエリート官僚は答え始めた。

「この捜査本部の本部長を勤めている光浦 能力(みつうら のうり)だ」

「ふ~ん」長四郎から質問したのに、興味なさそうに相槌を打つ。

 この二人の間に嫌悪の空気が流れているのは、燐、遊原巡査、明野巡査の三人は感じ取った。

「それで、これに心当たりはあるのか?」

 光浦は明野巡査が見せた同じ写真が載った捜査資料のページを開いて長四郎に尋ねた。

「知らないね。全くクリスマス前で忙しいのに全くたまったもんじゃないよ」

 長四郎は口を窄めながら文句を言う。

「そんなこと我々には関係ない。おい」

 光浦が声を掛けると、長四郎の両脇に刑事が立つ。

「なにか、思い出してもらうまで話を聞いて差し上げろ」

 光浦の指示を受けた刑事は長四郎を抱えて取り調べ室へと連行されていった。

「ご苦労だったな。さ、窓際部署に戻りたまえ」

 明野巡査が抗議しようと身を乗り出すのを済んでの所で遊原巡査が止めて「失礼します!」そう告げ明野巡査を小脇に抱えそそくさと捜査本部を後にした。

「てな、事があったんですよ」

 燐はこれまでの事情を命捜班・第一班の一川(ひとつかわ)警部と(あや)巡査長に話をしていた。

「へぇ~ そんな事がねぇ~」

 絢巡査長はパソコンにデータを入力しながら雑な感想を述べた。

「なんすか? その雑な返事は」

「ラモちゃん。絢ちゃんはね、今、機嫌が悪いと。そっとしといて上げて」

 一川警部が御免のジェスチャーをしながら謝罪する。

 燐はキャスター付きの椅子を転がして一川警部に近づき理由を小声で聞き始める。

「何があったんですか?」

「いや、それがね」

 ゲネラールの事件が発生して命捜班・第一班にも出動の要請がかかった。

 現場に臨場し捜査会議にも参加して、これから捜査開始といったところで光浦から下された命令は捜査費用の取り纏めをする事であった。

「てな、事があってね。そっからもう」不機嫌と言いたそうな顔をする一川警部。

「確かにあいつ、嫌なエリートって感じでした」

「そうなの? あたし、よく知らんとよ」

「一川さん、捜査に参加していないんですか?」

「いや、佐藤田さんとお話ししてね。若い子らに任せようかって話になったと」

「ふ~ん」

 燐の目は信じていない。そういった目をしていた。

 何故なら、一川警部の机の上には将棋の本やオセロの本が置かれていた。

 この部屋に来た時、一川警部は作業する絢巡査長の横で将棋の本を険しい顔で読んでいたのだ。多分、事件の捜査を若い刑事達に任せて自分達はここでゲームに勤しむそんなものが感じられた。

「な、何よ」一川警部は燐の目を見てたじろぐ。

「じゃ、私、帰ります」

 このまま居ても退屈と判断して、燐は警視庁を出ていった。

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