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将軍-1

“熱海君への挑戦である。最初の問題はこの男の正体を掴む事だ。私の名は、ゲネラール”

 コンクリート打ちの壁一面に血で書かれた挑戦状。そして、その真下に転がる死体。

 この異様な光景に臨場した警察官達は、犯人の異常性を窺い知るのだった。


 クリスマスイヴまで残り五日。その日、私立探偵の熱海 長四郎(あたみ ちょうしろう)はクリスマス商戦に向けて機材のメンテナンスをしていた。

 探偵一番の稼ぎ時と言っても過言ではないクリスマス。浮気調査の依頼が一番に舞い込む時期でもあるのだ。当然、長四郎も浮気調査を行う。今年は大手の探偵社から委託された依頼を受けることとなった。

 例年なら自身の事務所に直接依頼が来るのだが、今年は来なかった。その理由は、あるネットニュースのせいであると長四郎は思っていた。その記事は11月の末に掲載された。

“事件解決の裏に有名探偵の活躍が!!”という見出しで、某検索サイトのトップニュースに挙げられ多くの人間に読まれた。これがいけなかったのだと長四郎は考えていた。

 ネットニュースが載ってから、取材依頼がひっきりなしに来て困っていた。

 だが、そんなのは可愛いもので一番困った事は・・・・・・

「なんで、私の事は書いていない訳? 有り得ないんだけど!!」

 ネットニュースの元凶を作る女子高生の羅猛 燐(らもう りん)が憤慨した事だ。ネットニュースを書いた出版社に襲撃をかけようと計画し始めるぐらいの怒りようで宥めるのに苦労した。

 そんなこんなで、12月半ばを過ぎても浮気調査の依頼は来ず大手探偵社に依頼の一つを回してもらい今に至る。

 ラジオから“今年のクリスマスは誰と過ごしますか? 投稿をお待ちしております!”とラジオパーソナリティーが投稿お題の発表を言う。

「今年のクリスマスは、不貞をやらかすダメ男と過ごします」長四郎はラジオに向かって独り言を呟いた。

 そんなこんな機材の動作チェックが終わったタイミングで、事務所のドアがノックされた。

「はい。はい」

 長四郎はラジオを止めドアへと向かう。

 ドアを開けようとすると、先にドアが開けられた。

「探偵さん。居たんですか?」そう声を掛けてきたのは、警視庁捜査一課命捜班・第二班の刑事、明野 泉(あきの いずみ)巡査であった。

「居るよ。今日は何しに来たの?」と用件を尋ねると明野巡査と共に行動する遊原 祐希(あそはら ゆうき)巡査が「ここじゃ話しにくいんで、中で話したいんですけど」と言った。

「どうぞ」長四郎は言われた通りに二人の刑事を事務所に招き入れる。

 二人を来客用の三人掛けソファーに座らせ、長四郎は二人分の珈琲の準備を始めながら来訪目的を聞き始める。

「それで、俺に何か用なの?」

「探偵さん。ゲネラールって名前に心当たりはありませんか?」

 遊原巡査の問いに長四郎は作業の手を止め考え始める。

「無いですか?」明野巡査が質問すると「無いな」と答えて再び珈琲の準備をする。

「そうですか」明野巡査はどうしようかと顔で遊原巡査に相談する。

「これから時間ありますか?」

「遊原君。何か重要参考人に聞くような言い方だな」

 ドリップしながら長四郎は嘲笑する。

「探偵さん、私達大真面目なんですよ」

「ごめん、ごめん」

 出来上がった珈琲を遊原、明野巡査に出す。

「で、殺人事件の解決に協力して欲しいとか? だったら、ごめんだね」

「違います。これ、見てください!」

 明野巡査はゲネラールが書いた挑戦状の写真を長四郎に見せた。

「何、これ?」

「三日前に起きた殺人事件の現場に書かれた挑戦状? らしきものです」と告げ、遊原巡査は珈琲を飲む。

「挑戦状だね。これは」

「一緒に捜査してもらえますよね?」明野巡査が捜査協力を申し出でた。

佐藤田(さとうだ)さんはなんて言っているの?」

 長四郎の言う佐藤田さんとは、この若い刑事達の上司である。

「班長は、何も。探偵さん、この珈琲美味いですねぇ~」

「遊原君は珈琲と言うものが分かっている。嬉しいな」

「そうじゃなくて、捜査に協力してください」

「え~ クリスマス商戦に向けて色々と準備があるからなぁ~」

 渋る長四郎をどうやって、うんと頷かせるか明野巡査は顔をしかめ考えていると「大した依頼じゃないんだから受けなさいよ」という天の声ならぬ燐の声が聞こえてきた。

「ラモちゃん!」

「何、驚いてるのよ。良いよ。警視庁に行こう」

「何、勝手に引き受けてんだよ!」長四郎が文句を言うと「文句あるのか? え?」とドスの効いた声で凄む燐に勝てるわけもなく警視庁へと向かう事となった。

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