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探偵は女子高生と共にやって来る。(感謝150,000PV達成)  作者: 飛鳥 進
第弐拾玖話-行方
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行方-13

 遊原巡査と明野巡査が訪れたテーラーは、一週間前に開店したばかりの店であった。

「いらっしゃいませ」

 店に入った二人を出迎えたのは、英国紳士という言葉がピッタリのハンサムな外国人であった。

「今日は何をお求めで?」

「違います。俺達は客じゃなくて、こういう者です」

 遊原巡査が警察手帳を提示する。

「警察の方でしたか。失礼致しました」と丁寧な謝罪をする店員に二人は少し緊張する。

「それで、今日はどのような御用件で?」

「ええと」急に言葉が出なくなった遊原巡査を「祐希」と小声で発破をかける明野巡査。

「この女性がこちらに来店したことありませんか?」

 遊原巡査はイヴ・ウィンガードのパスポート顔写真を店員に見せる。

「分かりかねますね」

「そうですか。ありがとうございました」

 遊原巡査と明野巡査はクルリと踵を返し、店を出た。

「なんか、緊張するお店だったね」

 店を少し離れてから明野巡査がポツリと話し始めた。

「お前だけだよ。緊張してたのは」

「そんなことないよ!」

 そう反論した瞬間、背中に冷たい物が当たる。

「ちょっと、祐希!」

 隣を歩く遊原巡査がいたずらしていると思い、横を歩く遊原巡査に目を向けると遊原巡査は両手を上げて立ち止まっていた。

「え?」明野巡査はゆっくり後ろを振り向こうとすると、「こちらを向くな」と背後に立つ人間に言われ素直に従う。

 二人は、謎の男たちに連れられて有楽町の商業施設へと連れて行かれ、商業施設内にある喫茶店へと入店した。

 そこで、二人を待っていたのは公安外事課の木幡であった。

「ま、座ってくれ」木幡は自身の前に立つ若い刑事達に着席するように促す。

「失礼します」

 遊原巡査はテーラーの時とは違い、堂々とした態度で木幡の向かい合う席に腰を下ろした。明野巡査もそれに続き、遊原巡査の隣の席に着席した。

「公安外事課の人ですね」遊原巡査から切り出した。

 木幡の反応は黙ったまま頷く。

「そういう君たちは命捜班の子らだろ?」

「答えるまでもないですが」と遊原巡査は前置き「どうして、あの店を監視しているのかを教えて貰えませんか?」自分の疑問をぶつけた。

「その前に。君たちの上司から報告を受けていないんだよ」

「報告ですか?」明野巡査がここで会話に入ってきた。

「そう、報告。何か分かったんじゃないのか? イヴ・ウィンガードについて」

「ありませんね」遊原巡査は即答した。

「じゃあ、我々の情報は開示できないな」

「win winの関係を望むってわけですか」

「当然だろう」

 遊原巡査はそれから少し考えて「気が変わりました。話します」と言った。

「正しい判断だ。我々も持っている情報を提供しよう」

「ありがとうございます。イヴ・ウィンガードですが奴は今、池袋に居ます」

 木幡の様子を観察しながら、遊原巡査は話を続ける。

「宿泊先は銀座らしいですね。そこまでしか、正直分かっていません」

 遊原巡査はイヴ・ウィンガードが女であることは敢えて伏せた。

「そうか。では、我々の情報を」

 木幡は自身の右横に置いていたビジネスバッグから一つの封筒を取り出し、遊原巡査と明野巡査の前に置いた。

「拝見しても?」

「どうぞ」手を差し出して許可する木幡。

 遊原巡査と明野巡査は顔をくっつけて、封筒の中身を確認する。

 それはFBIの捜査資料を日本語訳したものであった。

 内容は、イヴ・ウィンガードは女性を誘拐し好みのタイプではない女性であった場合、薬漬けにして人身売買を行っている事が書かれた報告書だった。

 個人で人身売買なんぞできるわけもなく、イヴ・ウィンガードは人身売買のシンジケートの頭目であった。シンジケートはスーツテーラーを隠れ蓑にし、アメリカの富裕層に向けて人身売買を行っていたがFBIの決死の活躍によりアメリカでは壊滅状態になり、その矛先を海外へと向けたといった所であった。

「これ、持ち帰っても?」

「構わないよ。但し、君たちが仕入れた情報は我々に報告する。それが条件だ」

「了解です」

「私の連絡先は資料に書いてあるから。君が直接、私に連絡してくれて構わない」

 遊原巡査とはコクリと頷いて了承した旨を伝え、明野巡査を連れて店を出た。

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