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探偵は女子高生と共にやって来る。(感謝150,000PV達成)  作者: 飛鳥 進
第弐拾捌話-御祭
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御祭-16

 長四郎は運良く命捜班のパトカーに乗せてもらい、対象を尾行していた。

「佐藤田さん。ありがとうございました」

 長四郎は礼を言うと「いえいえ、気にしないで」と佐藤田警部補はそう返事した。

「探偵さん。今、追っているのは事件関係者なんですか?」

 パトカーを運転する遊原巡査が質問した。

「あるよ。聞いて驚くなよぉ〜 今、追っているのは」

「国巳くんの保護者ってところだろうな」

「佐藤田さん。どうして、言っちゃうかなぁ〜」

 楽しみを奪われた長四郎はしょげる。

「おい、遊原。こっちは、覆面パトカーじゃないんだ。あんまり、堂々と追っかけていると向こうさんに気づかれるぞ」

「はい。分かっています」

 佐藤田の忠告を聞き、遊原巡査はパトカーのスピードを落とし目の前のタクシーと距離を取る。

「てか、班長。俺たち刑事ですよね? なんで、覆面パトカーじゃないんですか?」

「俺も気になってた」長四郎も遊原の疑問に同調する。

「なんでって。パトカー乗ってたら、お巡りさんっぽいでしょ」

 その一言にガクッと肩を落とす二人。

「なんすか。その子供っぽい理由は?」長四郎がそう言うと「良いでしょ? 人間、子供心を忘れないのが人生を楽しく生きていくコツだよ」と佐藤田はニヤリと笑う。

 このおっさんとは、一回飲みに行きたいなと長四郎は本気で思うのだった。

 対象を乗せたタクシーは、品川駅で停車し対象を降ろした。

 覆面パトカーも数十メートル離れた位置で停車し、長四郎と佐藤田警部補を降ろした。

「じゃ、行きますか」

「うっす」

 長四郎と佐藤田警部補は尾行を開始した。

「あ、そう言えば例の女の子。どうでした?」

 長四郎は深中都姫の捜査結果を質問した。

「ああ、彼女ね。亡くなっていたよ」

「え!?」長四郎は思わず大きな声を出してしまい、対象が長四郎たちの方を振り向いてしまう。

 二人は咄嗟に身を隠し、気づかれることはなかった。

 対象が歩き出したのを確認し、長四郎達は尾行を再開し始めた。

「亡くなっていたとは・・・・・・・」

「俺もびっくりしたよ。それでね、彼女のご両親は医療裁判の準備をしていたよ」

「医療裁判ですか?」

「そう、医療裁判」

 対象が緑の窓口へと入って行ったのを確認した長四郎と佐藤田警部補はみどりの窓口の前を通り過ぎ、対象が出てきた後でも見失わない場所で待機しながら話を続ける。

「医療裁判って事は、薬の投薬を間違えたとかですか?」

「それをこれから調べようかなってところ」

「そうですか」

「で、探偵さんの方は?」

「お恥ずかしい話、今現状の対象が俺達の動きを掴んでいたってところですかね」

「動きって。聞きこみした事?」

 佐藤田の質問にコクリと頷く長四郎。

「どうです?」

 ここで、パトカーを駐車しに行っていた遊原巡査が合流した。

「特に変わった動きはないよ」佐藤田警部補は答えた。

「そうですか。ここに来る途中、国巳って生徒を見かけましたよ」

 遊原巡査は二人に報告し「親子揃って高飛びする気なんですかね?」と自身の推理を聞かせる。

 だが、長四郎と佐藤田警部補は眉をひそめ「そんな訳ないじゃん」と声を揃えて真っ向から否定した。

「すいません」と遊原巡査はしょぼくれた顔で二人に謝罪した。

「別に責めている訳じゃないから」長四郎が宥めていると、対象がみどりの窓口から出てきた。

 三人は、対象の尾行を再開した。

 対象が新幹線の改札口に来ると、対象を待っていた国巳が接触した。

「母さん」

 国巳は笑顔で母親に近づき、着替えの入ったボストンバッグを手渡した。

「ありがとう。豹ちゃん」母親は笑顔で人目も憚らず国巳を抱きしめる。

「や、やめてよ。母さん」

「じゃあ、お母さんは出張に行ってくるから留守番宜しくね」

「うん」

「あ、そうそう。ちゃんと、保護者会で豹ちゃんの無実を力説しといたから。安心して」

「ありがとう」

「じゃ、行ってくるね」

「いってらっしゃい」

 国巳は改札口に母親が入っていくのを確認すると、大きな舌打ちをして帰路につくのだった。

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