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探偵は女子高生と共にやって来る。(感謝150,000PV達成)  作者: 飛鳥 進
第弐拾漆話-大物
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大物-4

 九月になったとはいえ、まだまだ陽射しは強い。

 長四郎はバイクを走らせながら、そんな事を考えていた。というのは噓で警視庁を出てから自分を監視するように尾行する車がありこの車をどうやり過ごそうか。

 それについて思案していた。

 尾行している車はLEXUS LS、ハイヤーの中でもハイグレードクラスの車種であり、そんな車種に乗る人間は限られている。

 つまりは、森下邸から尾行されていた事になる。

「どうしようかなぁ~」

 信号待ちの隙に、長四郎は自分を尾行するハイヤーの方へ振り向き運転手に笑顔で手を振る。

 相手はスーツを着た推定年齢・三十歳前半の男性が運転していた。

 そして、長四郎の手を振った反応はというと、運転手の男はムスッとするだけだった。

「つまんねぇ~」

 残念がる長四郎はバイクをフルアクセルで走らせるのだが、ハイヤーは追走してくる事はなかった。

 長四郎は何事もなく事務所に戻る事ができた。

 事務所の前にバイクを停車させ、周辺に監視者が居ないかを確認した。

 そのような人間を確認できなかったので、事務所がビルに入って行く。

 階段を上がり、事務所の入り口の前に立つ長四郎は眉をひそめる。

「はぁ~」と溜息をつき、長四郎は勢いよくドアを開ける。

「あ、お帰りぃ~」

「何がお帰りぃ~ だよ。厄介な依頼を持ち込みやがって」

 長四郎を笑顔で出迎える燐に嫌味を言う。

「でも、報酬は良いはずだけど?」

 百万円に釣られて依頼を受けた長四郎は、何も言い返せなかった。

「それで? どうだったのかな?」

「どうとは?」

「だから、行方不明者は見つけたのかってことよ」

「いいや。でも、収穫はあった」

「収穫。聞かせてもらおうじゃない」

 燐はソファー深く腰掛ける。

「嫌だね」

「あんた、仕事を回してあげた人への感謝ってものがないの?」

「厄介事を持ち込み奴に感謝せにゃあならんのよ」

「という事は、厄介な事になりつつあるって事ね」

「そういう事は察しが良いんだな」

 長四郎はそう言いながら、お気に入りのゲーミングチェアに座る。

「で、厄介な事って何々?」

 興味津々といった感じの顔で燐が聞いてくる。

「ラモちゃん。今回の相手は少し骨が折れる。若い子は元気あって宜しいかもしれんがフォロー出来るにも限界があるのよ」

「何それ?」

「ま、不登校高校生には分からんのよ」

「不登校高校生って言うけどさ。今日の恰好見て、それ言う訳?」

 燐はソファーから立ち上がり、スカートをひらりと回転させながら一回転する。

「そう言うのは、可愛い女子高生がやるもんなんだぜ。小憎らしい娘がやってもなぁ~」

 燐は静かにクッションを取り、長四郎に投げつける。

「グゲボッ!!」

 クッションは長四郎の顔面にクリーンヒットし、長四郎はゲーミングチェアから崩れ落ちるのだった。

 その夜、森下邸では当屋敷の主人・森下衆男が秘書の瓜野 殴(うりの なぐる)から近所をうろついていた男・熱海長四郎の報告を受けていた。

「高校生の時は、甚だしい活躍を見せていたようですが、今現在は浮気調査を専門の私立探偵のようです。しかし」

「しかし?」

「はぁ。ここ数ヶ月、一人の女子高生と共に幾つかの事件解決に導いているという事も分かっております」

「ほぉ~ それで? 何故、うちの周辺をうろついていたのかね?」

「それなのですが、どうも例の家政婦の捜索をしているのではないかと」

「それは、調べた結果なのか?」

「いえ、私の推測です」

「推測?」

 齢、八十歳にしながら鋭い眼光を向ける森下にたじろいでしまう瓜野。

「ですが、探偵がうろつく理由としては理にかなっています」

 そう進言したのは、森下の大のお気に入りの秘書・大日方 美麗(おきがた みれい)大日方 美麗(おきがた みれい)であった。

 美麗はゆっくりと森下の手を握り、指を絡める。

 森下はニヤッと笑い「そうか。そうだな。美麗の言う通りだ」そう言いながら、口から涎を垂らす。

「もう、汚いですよ」

 美麗は森下の耳元で囁きながら、涎を持っていたハンカチを拭きあげるのであった。

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