対決-12
「え? 何? 友達のお部屋が荒らされてた?」
長四郎は片耳を塞いで、燐の声に集中する。
「そうなの。なんか、事件に巻き込まれているって思わない?」
「え? One More Please(もう一度言って)!!」
「だ~か~らぁ~ 事件に巻き込まれているって思わない!!」
燐がスマホのマイクに向かって怒鳴りつける。
長四郎のスマホのスピーカーから、燐の怒声が鳴り響きスマホから耳を離す。
「で、どう思う?」
「どう思うって? そういうことは、探偵じゃなくて警察に言いなさいよ!」
長四郎は燐にされたようにマイクに向かって怒鳴りつけ、電話を切った。
「ったく、探偵をなんだと思ってんだよ」
長四郎はスマホをズボンのポケットにしまうと、カウンターで楽しく可愛いギャルと話し込む勇仁の元へと向かう。
「ねぇ、もし良かったら、この後さおじさんとお食事にでも行かない?」
「え~ どうしようかなぁ~」
「どうしようって。焦らすね、男の扱いに慣れてる」
「何、パパ活ならぬオジィ活してるんだよ。行くぞ、勇仁」
「これから、良いとこなのに。ねぇ」と言うとギャルもまた「ねぇ」と言って返す。
「全く、孫も孫だけど。爺さんも爺さんだな」
「うん、何か言った?」
「いいや、何も」長四郎は首を窄めて否定する。
「あ、そ」
勇仁と長四郎は、ステージに向かって歩を進めていく。
「言っちゃ悪いが、今日日こんな場所に敵さんが居るとは思えないんだがな」
長四郎と勇仁が居る場所は、六本木にあるVIP御用達のナイトクラブであった。
襲撃犯を締め上げ、雇い主が今晩、このナイトクラブに姿を現すというので、二人は自らあぶない目にあいに来たのだ。
だが、二人はそんな事、つゆ知らずといった感じで曲に合わせてダンスしているVIP達の邪魔にならないよう、二人もダンスをしながらステージに近づこうとする。
「なぁ、この調子じゃあステージに近づけないぞ」
長四郎が勇仁に話しかけると、勇仁はダンスのパートナーを見つけ華麗にダンスをしていた。
「長さん、悪いが先に行ってくれ」
「分かったよ」
長四郎がステージの真正面に立ったその時、クラブの照明が落ち暗闇に包まれた。
そして、ドラムロールの後にスポットライトが長四郎と勇仁に浴びせられる。
「なんだ。なんだ」
少し嬉しそうにする長四郎とダンスパートナーに逃げられ肩を落とす勇仁。
「全く、俺がカッコイイからってスポットライト当てることないのに・・・・・・」
勇仁が言った瞬間、再びドラムロールが流れ始める。
「Lady’s and Gentle-Man!!! これから、楽しいショーの始まりです!!!」
そのアナウンスと共に照明が点くと、仮面を被った客が長四郎と勇仁の周りを囲んでいた。
「あれ、君ぃ~ どうしたの? 手にそんな物騒な物持って」
先程まで一緒にダンスしていたパートナーには仮面が付けられ、その手にはサバイバルナイフが握られていた。
「勇仁!!」
長四郎が声を掛けた瞬間、勇仁の目の前に立つダンスパートナーがナイフを突き刺してきた。