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話合-12

「こちらが我が校、自慢の科学部です」

 都立兄貴高校の教頭先生が、長四郎そして燐に自慢の科学部を紹介する。

 話は30分前に遡る。

 長四郎は容疑者候補筆頭の三屋楽志の母校である都立兄貴高校へ燐を連れだって来ていた。

 何故、燐が居るのか?

 それは、この校内を歩き回る為の口実作りの為である。

 設定はこうだ。

 燐と長四郎は兄妹で、一番下の科学が大好きな妹の志望校候補の学校を見学したい。

 そして、燐は現役の高校生なので、現役の目線から学校を品定めする要因の一つとして連れ添っているという設定だ。

 そのようにここに勤める教師に話したら快く許可してくれ、科学部顧問の教頭先生にも事情を話してくれ今に至るそういうわけだ。

「どうです? 素晴らしいでしょう」

 教頭先生は、今まさに実験中の生徒達を生き生きした目で見つめながら長四郎達に賛同を求める。

「そうですね」と燐だけ答える。

 長四郎は実験中の生徒達に興味を示さず、部屋にかかっている表彰状の入った額縁や鍵付きの棚に入っている薬品等に目を向けている。

「本校の科学部は、化学実験グランプリで優勝したこともある部活でしてね」

「へ~凄いですね」

 燐は名一杯関心を寄せる演技をする。

「あの、ここの薬品って先生が管理なさっているんですか?」

「え?」

 思わぬ質問が、長四郎から飛出し驚く教頭先生。

「あ、いや、私達の応対をしている間、生徒さん達は自主的に実験の用意をなさっているようだったので。棚の中には劇物があるわけですよね? 生徒さん達が勝手に出して良いものなのかと」

「それはですね・・・・・・」

 杜撰な管理している事がバレそうになり教頭先生は、必死に言い訳を考える。

「別に深い意味はありませんよ。先生が危険物の扱いを部員に説明しかつ、部員もまたそれを理解し、部員主体で扱いができる。

それだけで、御校科学部の部員さんが優秀ということが分かりますから」

「それは、ありがとうございます」

 実際、薬品等の扱い方法は長四郎の言う通りであった。

 その為、教頭先生は長四郎から褒めてもらえ少し嬉しく思う。

「最後にもう一つだけ、この化学実験グランプリで優勝したのは6年前だけですね。

この年には余程、優秀な部員が在籍していたんですか?」

「ええ、まぁ」

 現役の部員が居る手前、少し濁した感じで答える教頭先生。

「もし良かったら何ですけど、その年の部員さんの写真を見せて頂くことは可能ですか?」

「何故、その写真を?」

 ここで、あまりにも見学者ならぬ質問ばかりする長四郎に疑いを向ける教頭先生。

「それは兄の趣味というか変な癖でして。

表彰された方を見ると縁起が良いとかなんとか・・・・・・ね!」

 燐が変な助け舟を出す。

「そうなんですよ。意外かもしれませんが縁起が良いんですよ!!」

 引き笑いを浮かべながら、適当なことを長四郎は発言する。

「変わった趣味ですね。

あそこに飾ってありますよ。当時の写真」

 納得してくれたのかどうか分からないが、教頭先生は優勝した際の表彰状の隣に飾ってある写真を指さす。

「あ、この人!!」

 そこには長四郎の知っている人物が写っていた。

「彼を知っているんですか?」

「ええ、まぁ。この生徒さんはさぞ優秀だったんでしょうね」

「はい。彼が優勝に導いたと言っても過言ではありません」

「そうですか」

 長四郎はじっとその写真を見つめるのであった。

 そして、場面は変わり桂太郎の家に話は移る。

 今、桂太郎の家は修羅場とかしていた。

「ケイ、このお金は何?」小春は桂太郎を問い詰める。

 長四郎と話をしている時に部屋の掃除をしていた小春が、サンデーから貰っていたお小遣いが見つかったのだ。

 桂太郎は、貰った小遣いの2割だけ使い後の8割は貯金していた。

「知らない」

 このお金の出処をめぐって、押し問答が繰り返されていた。

「こんな大金、盗んだの?」

「盗んでないよ!」

 桂太郎の貯金額は、優に30万を超えていた。

「私はあんたに不自由させないように頑張ってきたつもり。ねぇ、このお金はどうしたの?」

「教えない」

 小春は、寝室に何かを取りに行った。

 すぐに戻ってきた小春の手には、一本の扇子が握られていた。

「私はあんたをこれでぶつ。

良い? これは、お父さんが使っていた扇子。今からぶつのはお父さんだと思いな」

 その言葉を聞き、桂太郎は遂に白状する。

「そ、そのお金は父ちゃんから貰ったお小遣い。貯金していたんだ!」

 泣きじゃくりながらこのお金の出処を喋る桂太郎。

「お父さんが、あんたにこんなにお金くれたの? いつ?」

「最初に会った時から」

「じゃあ、このお金は・・・・・・」

「貯金してた」

「そうだったの」

 小春の目に涙が浮かんでくる。

 そして、桂太郎を抱きしめるとこういうのだった。

「ごめんね。怒ったりして」

「ううん。このお金、父ちゃんと母ちゃんの結婚式代にしたくて・・・・・・」

「ありがとう」

 小春は、桂太郎をより力強く抱きしめる。

 桂太郎は母の小春と父の遊平がよりを戻した際の結婚式費用として遊平から貰ったお小遣いを貯金していたのだ。

 だが、もうそれは叶わないものになった。

 桂太郎も必死に小春を抱きしめ心に誓うのだった。

 父ちゃんの代わりに、必ず母ちゃんを幸せにして見せると。

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