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探偵は女子高生と共にやって来る。(感謝150,000PV達成)  作者: 飛鳥 進
第弐拾肆話-議員
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議員-5

 それから三日、経った。

 結局、何も起きないので長四郎は事件解決の糸口を探るため、第一の被害者・泉大衆議院議員の選挙区、奈良県某市へと来ていた。

「THE・自然といった感じだな」

 長四郎は降り立った駅から見える山々を見ながら、そう呟いた。

 改札を出て、散歩の感覚でその土地の雰囲気を確かめようと歩を進めていた。

 そして、駅から歩いて十五分ぐらい経った所で、雑木林を伐採して工事している場所を見つけた。長四郎は工事しているショベルカーやダンプカーを眺めながら、工事看板に向かって歩いて行く。

 工事看板の前に立つと、この場所に何が建造されるのかを確かめる。

「こんな所に、市の歴史資料館が立つのか」

 こんな所に立てても、誰も来ないだろうと思う長四郎は工事看板を写真撮影して、その場を立ち去った。

 歴史資料館の工事現場から数百メートル離れた所でも、また工事が行なわれていた。

 今度は、古い民家を壊して新しい市民体育館の建築作業が進められていた。ここでもまた、工事看板を写真に納めた長四郎は踵を返して、駅へと戻っていく。

 その道中、バス停近くの椅子に座っている農作業用の服を着たご婦人から「こんにちは」と挨拶をされたので、「こんにちは」と返す長四郎はその流れで「いや、今年は暑いですね」と更に話を続けながらご婦人の空いている隣に座る。

「ホント、暑いわ」

 ご婦人は首筋に巻いたタオルで、汗を拭う。

「農作業の帰りですか?」

「そうやで。お兄ちゃん、なんやったらこれ持って帰り」とご婦人は自分のバックからビニール袋を取り出すと畑で収穫したジャガイモをビニール袋いっぱいに入れて渡してきた。

「ありがとうございます。遠慮なく頂きます」

 その袋を受け取った長四郎は「お姉さんは、ここに住んで長いんですか?」と質問した。

「長いね。結婚してだから、何年かねぇ~ お兄ちゃんは、ここに引っ越して来るんかい?」

「検討している所ですかね。東京の雑踏にはもうウンザリで」

「お兄ちゃん。東京から来たんかい。大変やったねぇ~」

「いえいえ、電車もバスもありますから」

「でも、本数少ないやん」

「確かに」

「東京の人からしたら、たまらないやない?」

「そうでもないですよ。こうして。お姉さんと楽しくお話できますから」

「もう嫌やわ~」ご婦人は嬉しそうな顔をしながら、長四郎の背中をバンっと思いっきり叩く。

 強烈な一撃に、顔を歪ませる長四郎。

「お姉さん。ここら辺って、再開発の地区になるんですか?」

「ああ、あの無駄な歴史資料館と市民体育館のことやろ。ここら辺の地域の人はあんまり喜んどらんねん」

「と言いますと?」

「元々、市民体育館は駅の近こうにあったんやけど。急に取り壊しよって、駅から遠い所に立てますって市長が言うもんやさかいに、あそこに住んで人達を追い出して、そん時は偉い揉めたわ」

「へぇ~ そんな事が。前の市民体育館は利用者、多かったんですか?」

「他所は知らへんけど。まぁまぁ、利用しとったんとちゃうんやない。あたしもママさんバレーで使っとたし」

「駅から離れた所に、建ったらママさんバレーの人数も減っちゃうじゃないですか」

「せやねん、今年に入って三人も辞めてもうて」

「三人もですか!」と答える長四郎だが元々、何人居たのか分からないママさんバレーチームについて適当な返事をする。

「なんか、大物の政治家のパワーであそこに建つって話を聞いたりもしたな」

「大物の政治家ですか」

 長四郎はそう言いながら、バス停近くの看板に貼られた泉大議員の選挙ポスターを見つめる。

 すると、バスがバス停の前で止まったので、ご婦人はそそくさとバスに乗る。

「お兄ちゃんは乗らへんの?」

「僕は逆方向のバスなんで」

「ああ、そうなんや。じゃ、またね」とご婦人が言うと同時にバスの扉が閉まり走り出した。

「またね、か・・・・・・」

 長四郎はそう言いながら、フッと笑うと駅に向かって再び歩き始め、ご婦人の会話の中で事件解決の糸口が少し見えたような気がした。

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