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展示-13

 一川警部達が説明を受けている頃、長四郎と燐は亀津と話し込んでいた。

「爺さんはこの博物館の常連って言ってたけど、何年前から通っているの?」

 急にため口になったなと思いながら、亀津は答える。

「ここが出来た時からだな」

「ここが出来た時って・・・・・・」

 燐がスマホで検索しようとすると「60年前だよ」と答える亀津。

「常連ってレベルじゃないじゃん。いくつの時に出来たの? ここ」

「忘れもしない。10歳の時」

「10歳」

「そう。10歳。そん時の目玉展示物っていやぁ~日本刀コーナーでな」

「ふ~ん。でも、爺さんの思い出としては、あのティーレックスの展示じゃないの?」

「よく分かったな。兄ちゃん」

「まぁ、人を観察することには得意としているからな」

「あの標本は、大事な人との思い出なんだよ」

「大事な人ですか?」

 燐のその言葉に、亀津は黙って頷いて返事する。

「男が何年も大事に思い続けるって事は、女だな」

 長四郎がそう言うと、亀津はギョッとした顔をして長四郎を見る。

「え! 図星!?」驚く燐に「ラモちゃん、そっとしておかないと」と長四郎は言う。

「あ、うん」

「兄ちゃんには、参ったな。その通りだよ。開館当時から勤めていた女性の職員さんが居てな」

「いや、別に話してもらわなくても・・・・・・」と戸惑う長四郎に対して、亀津は話を続ける。

「俺の初恋だったんだ・・・・・・」

「爺さんの初恋話なんて聞きたくないから」

「あの人の出会いは、運命的だった・・・・・・」

 長四郎の制止も虚しく亀津は回想に入る。

 ここで亀津の回想を簡単に紹介しよう。

 その女性職員との出会いは、60年前のとある夏の日であった。

 亀津少年は、いつものように博物館で友人達と鬼ごっこをしていると、服の首根っこを掴まれ何が起きたのか戸惑う亀津少年は自分を捕まえている人物を見る。

 そこに居たのは20代ぐらいの若い女性であった。

 その女性から、こっぴどく怒られた亀津少年。しかし、その女性の美しさに見とれてしまい怒られているのなんてなんのそのといった感じでその日以降、亀津少年は博物館へと足げなく通うようになった。

「分かった。その女性との出会いが今の爺さんがここに通う訳ってことだな」

「そんな言い方ないんじゃない」

 まさかの燐が長四郎をしかりつける。

「え?」

「このお爺さんにとってはとても大事な思い出なんだよ。それをどうして茶化すわけ?」

「いや、別に茶化しては・・・・・・」

「問答無用! すいません、もう少し話を聞かせて貰えますか?」

 燐は亀津にそうお願いし、亀津と初恋相手の女性職員の話を30分も聞かされる羽目になった。

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