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話合-2

「ラモちゃん、こんな所で何しとうと?」

 一川警部は、廊下で突っ立っている燐に質問する。

「いや、この子に中で話している事、聞かせるわけにはいかないから」

 燐は隣にいる子供に目を向ける。

「その子は?」

「被害者の息子だそうです」

 長四郎が補足説明する。

「君、名前は?」

「人に物事を尋ねるんだったら、自分から名乗るもんだろ。ハゲおっさん」

『ぷっ!!!!』

 小学校低学年の子供からまさかそんな言葉が出てくるとは思わず、長四郎と燐は揃って吹いてしまう。

「はいたぁ~こりゃ、一本取られたばい。

あたしは、捜査一課刑事の一川と言います。貴方のお名前は?」

桂太郎(けいたろう)」ボソッと名前だけ呟く。

「苗字は何ていうとね?」

「談。談 桂太郎(だん けいたろう)

「談桂太郎君ね。うん?」

 一川警部はそこで、この少年の苗字が被害者と一致しないことに気づいたが、言葉にはせず、質問を続ける。

「それで今日はお父さんの高座を見に来たと?」

「違う」

「この子、演芸館の前を1人俯いて歩いていてさ。

話聞いたらお父さんに会いに来たっていうから、ここの人に事情説明したら関係者入口から入れてもらえて」

 ここで燐が説明に入ってくる。

「ふ~ん、その時から長さんもおると?」

「いや、違います。事件発生してすぐ呼びつけられてここに」

「そういう事・・・・・・じゃあ、あたしは中で話、聞いてくるから。この子宜しく」

 一川警部は桂太郎を燐に任せて、楽屋へと入っていく。

 中に入ると、絢巡査長が聞き込みを終えたばかりであった。

「絢ちゃん、どう?」

「そうですね。これと言っては」

 一川警部の問いに絢巡査長は捜査情報を漏らさないよう取り敢えず、誤魔化す。

「失礼しまぁ~す」

 そう言いながら、長四郎が楽屋に入って来る。

「あの、二、三お伺いしたいことがあるのですがよろしいですか?」

 長四郎が許可を得ると、その場に居る全員が『どうぞ』と声を揃えて許可する。

「あのチャラーンは、サンデーさんのお決まりのルーティン何ですか?」

「いや急にし始めたので、僕達もびっくりしたんですよ」

 前座の落語家・林家 安城がすぐさま答える。

「申し訳ないですが、状況を詳しく教えて頂けませんか?」

「はい。あれは・・・・・・」

 安城が出囃子を鳴らし終えて、舞台袖で見学しているとサンデーが頭を上げて話始めようとしたその時、いきなりバンザーイをしてそのまま仰向けに倒れた。

 何か新手の演出家と思った安城だったがあまりにも動かないし、客席もざわつき始めたので慌ててサンデーに近づくと目を開らき、声を掛けても反応が無かったので息しているか確認していなかった。

 そこからは、通報という当たり前な行動を取ったとのことであった。

「成程。サンデーさん、出番前に何か言ってませんでしたか? 殺されるかもしれないとか」

「いえ、特には・・・・・・」

「いや、自分のネタ帳が狙われているとか言ってたような」

 スタッフの押井(おしい)が思い出したように喋る。

「ネタ帳ですか。それ今、どこにあるか分かりますか?」

「え~っと、このバックの中にあったかなと」

 そう言いながら、押井はサンデーの所持品のバックの中を漁る。

「ああ! 素手で証拠品を触らないで下さい!!」

 絢巡査長が注意するのを「まぁまぁ」と言いながら、一川警部は宥める。

「あれ、おかしいなぁ~」

 首を傾げる押井。

「ありませんか」

「はい、いつもならこの内ポケットに入っているんですけど・・・・・・」

 押井は内ポケットを長四郎に見せる。

「何もないですね」

「あ・・・・・・もしかして、ネタ帳目当てで殺されたとか?」

 押井が動機を推理する。

「まぁ、と言っても家に忘れてきただけかもしれませんし」

「そうですよね」

 長四郎のその言葉に出すぎたなと押井は思う。

「それより、もし知っていたら何ですけど。

桂太郎君の住所を知っているなら教えていただけないでしょうか?」

 長四郎は桂太郎の家の住所を聞き出そうとする。

「あ、それなら受付の珠子(たまこ)さんが知っているかも」

「珠子さんですね。分かりました。

じゃあ、一川警部。俺、ラモちゃんと連れて帰りますから。何か分かったら連絡下さい」

「はいよぉ~ 長さん、今日はありがとうね」

 一川警部に会釈し、長四郎は楽屋を出た。


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