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話合-1

 警視庁捜査一課に新たに設立された命捜班は、その日、暇を持て余していた。

 一川(ひとつかわ)警部は盆栽をいじり、(あや)巡査長はスマホでネットサーフィンにふけっている。

 パチッ、パチッと剪定の音だけが部屋に響く。

「これ買おうかなぁ~」

 絢巡査長は気にいった服の購入ボタンを押そうか否か悩みに悩む。

 一方、一川警部は手前にある枝を残しつつ、その奥にある枝を切ろうと必死に剪定鋏を入れようとする。

 その時、内線に着信が入る。

 突如の着信に驚き、一川警部は手前の枝を切り、絢巡査長は購入ボタンを押してしまう。

『ああっ!!』2人揃って大きい声を上げる。

 今にも泣きそうな顔で電話に出る一川警部。

「はい、命捜班、一川。

なぬっ!? 浅草の寄席でチャラーンをした死体!? 直ちに現場に臨場しますぅ~」

 そう言って、一川警部は内線を切る。

 一川警部が絢巡査長に指令を出そうとする前に、絢巡査長は既に準備を整え今すぐにでも臨場出来るといった感じで一川警部を見ている。

「浅草ですね。行きましょう」

「はっ、はい!」

 先に部屋を出る絢巡査長を慌てて追いかける。

 2人が現場に臨場すると、所轄署の刑事や鑑識捜査員が聞き込み、鑑識作業をすでに行っていた。

「警視庁捜査一課・命捜班の一川です。

現時刻をもって、我々に指揮権が移行しました。速やかにご協力を」

 現在、現場で指揮している責任者の所轄署の刑事に話しかける。

「了解、上から話は聞いている。引継ぎは省略で良いか」

 その旨を了承する一川警部。

 責任者の刑事は、その場に居る警察官たちに指揮権が移ったことを説明する。

「皆さんはそのまま自分の作業を続けてください。我々も勝手に動くので。

何か判明した際は都度、報告してくらい。宜しく」とだけ補足説明を行った一川警部は、捜査を開始する。

 絢巡査長に関係者への聞き込みを任せて、手を合わせて死体を確認する一川警部。

 死体は確かに正座を崩さず、チャラーンをしながら仰向けに倒れていた。

(チャラーンを知らない若者達よ。チャラーンでググれ!!!:筆者談)

 そして、死体は絶賛、検死中であった。

「この方の身元は分かっとうと?」

 近くに居る捜査員に身元の照会が取れているか確認する。

「はい、被害者は落語家のマガジン亭サンデー。本名、昇風 遊平(のぼりかぜ ゆうへい)さん、35歳です」

 一川警部の真横に、にゅっと顔が出てきて耳元で誰かが囁く。

「おわっ!! 長さん!? 何でこんな所におると?」

 その誰かとは私立探偵の熱海 長四郎(あたみ ちょうしろう)であった。

「それは楽屋に行ったら分かりますよ」

 長四郎のうんざりした顔を見て、誰が呼びつけたか一川警部は察し、話を続ける。

「それでこの仏さんは、有名な落語家さんなの?」

「はい、創作落語界の新星と呼ばれていた方みたいですね」

 スマホで検索した結果を、一川警部に伝える長四郎。

「成程ね、死因は分かりました?」

 一川警部は、監察医に死因を尋ねる。

「解剖してみないとも何ともですね。

外傷はありませんし、病死。

事件性があるとすれば毒殺ですね」

「でも、毒殺にしては苦しんでいるようには見えませんけどね」

 被害者の表情等の姿を見て、長四郎は率直な感想を伝える。

「そうですね。あの、もう良いですか?

早急にこのご遺体を解剖させて頂きます」

「宜しくお願いします」

 次に関係者への聞き込みをと思い、長四郎を伴って一川警部は関係者が集められているという楽屋に向かう。

 すると、楽屋前に長四郎のお得意様、羅猛 燐(らもう りん)が立っていた。

 1人の子供を連れそって。


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