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美味-10

 板前拓哉が逮捕されて数日が経ったある日。

 事件を解決せずに帰宅した長四郎は、いつも通り不倫調査の報告書を作成していた。

「ふふふーふふーん。ふふふふふぅーふー」

 鼻歌を歌いながら陽気にキーボードを叩いていると、ドドドドドドドドドっと階段を駆け上がる音がした。

 嫌な予感がした長四郎は、すぐさまドアに駆け寄り鍵をかける。

「ふぅー」息を吐きながら冷や汗を拭うと、ドアから離れる。

 だが、間もなくしてドォーンっという音が長四郎の後ろから鳴り響いた。

 ドアが蹴破られたのだ。長四郎は恐る恐る後ろを振り向くと、燐が当たり前の顔をして立っていた。

「あちゃ~」手で顔を覆い呆れはてる長四郎。

「何があちゃ~よ。事件を放り出して帰った奴がいっちょ前の事言うんじゃないよ」

「そんなことねぇ~しぃ~」

「ねぇ、私が何しに来たのか。聞かないの?」

「聞かない」

 長四郎は先程まで作業していた机に腰を降ろした。

「聞きなさいよ!!」

「へいへい。聞いてやるから、さっさと話せよ」

 長四郎は報告書作成を始めた。

「私、名探偵かもしれない」

「はぁ?」

 唐突な発言に長四郎が戸惑っていると、燐は鼻高々に語りだした。

「あんたが帰った後さ、事件解決したんだけど。気にならない?」

「気にならんね」

「くっ」

 今にも殴りかかりそうになるのをグッと堪えた燐は、自分が解き明かしたトリックを長四郎に語った。

「どぉ?」

 熱弁したので燐は少し息を切らしながら、長四郎にお伺いを立てる。

「なぁーんだ。そこまで推理出来たら大したお手柄じゃない」長四郎は空拍手を送る。

「なんか、バカにされてる感じ?」

「滅相もございません。何も知らない奴は気が良いもんだなと思って」

「は?」

 燐の間の抜けた顔を見て長四郎はほくそ笑むのだった。


「板前拓哉の送検が終わりました」

 絢巡査長は命捜班の部屋に入ってくると、回転椅子をクルクルと回転させている一川警部に報告した。

「そう」

「しかし、ラモちゃんの名推理で事件も無事に解決にして良かったですね」

「まぁねぇ~」

「それにしても、最後に持ってきたゴミ袋は長さんの指示ですか?」

「勿。長さん、帰ったふりしてイタタクの所でラモちゃんと同じ話をしとったらしい。長さんの場合はイタタクが犯人とは言っとらんらしいけど。そん時に気づいたらしい」

「そうでしたか」

「まぁ、もうちょっと早く連絡してくれれば、あたしも大変な思いせずに済んだんやけどね」

 一川警部に何があったのかは「以下、省略」って事で宜しくです。By.作者

「あれがあったおかげで、すんなりいったのも事実ですから。でも、一番気になるのはどうして長さんはあんなことしたんでしょう?」

「長さんも、そろそろラモちゃんから解放されたいんやないと?」

「あの感じじゃ無理ですよね」

「絢ちゃんもやっぱり思っとったんだ」

 それから命捜班の2人は高笑いするのであった。


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