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愛猫-12

 長四郎は少し仮眠をとった後、「CATエモン」へと訪れた。

 一川警部達は捜査会議の為、1人で尋ねると先客として燐が居た。

「あ、来た」燐は長四郎に気づくのだが、元々やっていた作業に戻る。

 どうやら、閉店の準備をしているようであった。

「ここ、閉店するんだ」作業をする燐に話し掛ける長四郎。

「移転です」

 答えたのは燐ではなく、店の奥からダンボールを抱えた翡翠が出てきた。

「移転ですか。例の新店舗ですか?」

「はい。思わぬ形ですが」

「そうですか。何か、お手伝いしますよ」

 長四郎は着ていたジャケットを脱ぎながら、申し出る。

「ありがとうございます。じゃあ~」翡翠は辺りをきょろきょろと見回しながら長四郎が行う作業を探す。

「役に立たないと思いますよ。そいつは」燐は小物を梱包しながら翡翠に告げ、長四郎は燐に向かって舌を出す。

「じゃあ、ここに置いてあるファイルをダンボールに詰めてください」

 翡翠が示す先は、レジ下に置いてあるファイルであった。

「分かりました」

 長四郎は早速、近くのダンボールを手に取って地べたに座ると作業に取り掛かった。

 燐は小物をダンボールに詰め終え、ダンボールが積み上げられている場所に運ぼうと長四郎の横を通ると、長四郎は作業に手を付けてはおらず、ファイル読み漁っていた。

「何してんの?」

「見ての通り、作業してるの」

「してないじゃん」

「これ見ろ」長四郎はページをめくりながら、顎で横に置いてあるダンボールを指す。

 だが、ダンボールの中には一冊のファイルしか入っていなかった。

「はぁ~」

 燐は溜息をつくと共に呆れたといった顔になり、ダンボールを置きに行く。

 その間も長四郎はファイルを読み漁り、ダンボールにしまい次のファイルを読み始めた。

「ねぇ、何を探しているの?」

「ラフテル」

「何それ?」

「知らね。それより他の作業しろよ」

 燐の方を向かず、ファイルに目を通し続ける長四郎。

「何を隠してる訳?」

「隠してないよ」長四郎はそう答えて、持っていたファイルをダンボールに入れ次のファイルを検め始める。

「そのファイルってこの店の帳簿?」

「そう」

「事件に関係あるの?」

「それを探している所」

 そんな会話をしていると、猫の尚道が長四郎の膝の上に載ってきた。それでも撫でる事など一切なく長四郎はファイルを読み続けた。

 燐はこれ以上、話していても作業が終わらないと思い自分の作業に戻る。それからも、長四郎は1人黙々と続け、1時間が経過した頃、全てのファイルを読み終わった。

「これで、ラスト」長四郎は名残惜しそうに最後のファイルをダンボールに入れた。

「ラモちゃん、ガムテープ貸して」

 長四郎からそう言われた燐は、近くにあったガムテープを投げ渡した。

「ありがとう」長四郎はダンボールに封をし、膝の上の尚道をどかし立ち上がろうとする。

 しかし、足が痺れてしまい立ち上がることができない。

「あ~ダメだ。立てないわ」

「え~何してんのよ。もうっ!」

 燐はすぐさま長四郎の手を貸しに駆けつけ、手を出して立たせようとする。

「いや、無理。立てない」

「じゃあ、どうして欲しいの?」

「取り敢えず、こいつとそこのダンボールを頼む」

 膝の上に載り腹を出し寝ている尚道をそっと燐に渡すと、尚道はカッと目を見開き燐の手からすっと抜け出ると「にゃぁ~」と鳴いて、まるで自分について来いと言わんばかりの顔でバックヤードに歩いて行く。

「ラモちゃん、ついて行って」

「分かった」

 燐は尚道の後を追うと、好江が使っていたであろうデスクの前で止まる尚道は机横の引き出しを見て再び「ニャー」と鳴いた。

 多分、この引き出しを開けろと言ったのだと燐は踏み、下段の引き出しを開けると長四郎が先程まで見ていたファイルと同じものが入っていた。

「にゃぁ~お」

 それだ。と言ったような顔で燐を見て長四郎の元へ戻る尚道に続いて燐もファイルを持って戻る。

「尚道がこれを」燐は何とか生まれたての小鹿のようにプルプルと足を震わせる長四郎にファイルを渡した。

「尚道が?」

 ファイルを受け取り、中身を確認すると長四郎の顔がニヤッと笑みを浮かべた。

「尚道はファインプレーをしたな」

「どういう事?」

 燐は意味が分からないので、首を傾げることしかできなかった。

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