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愛猫-2

 どうして、こうなったのか。

 燐は自問自答する。

 あの時、自分に何かできた事があったのだろうか。そういう思いがこみ上げてくる。

「ラモちゃん、気に病んでも仕方ないよ」

 長四郎はそう言って、目の前で冷たくなっている好江の遺体に手を合わす。

 好江は燐達が店を訪れた翌日、遺体となって発見されたのだ。

「でも・・・・・・」

 燐は昨日の事を思い出し始める。


 あの後も猫達と触れ合い楽しんでいると、嬉しそうな顔をした好江が声を掛けてきた。

「ね? 猫は気まぐれでしょ」

 燐に撫でられグルグルと喉を鳴らす尚道を優しく撫でる好江。

「そうですね。よしよしぃ~」

 貰ったエサをあげると、尚道は嬉しそうに頬張る。

「尚道、美味しい?」燐がそう聞くと「にゃぁ~お」と鳴いて返事をする。

「燐ちゃんは本当に猫と接するのが上手ね」

「いえ、あいつほどでは」

 猫達に囲まれひっきりなしで相手をする長四郎を見る燐。

「そうねぇ~彼にも手伝ってもらえば良かったかも」

「そうですね」

 ここに居た猫達は全て、捨てられたり飼い主が亡くなり世話をしてくれる人が居なくなった為、保護された保護猫たちなのだ。

 燐はその保護猫達の世話をするボランティアをしていた際、好江と出会った。

 そこで、意気投合した2人。好江がこの店を開始する際にあたって燐も手伝った過去があるのだ。

「はぁ~」好江が溜息をつく。

「どうしたんですか?」

「いや、ここ最近悩みの種が多くってね」

「悩みの種ですか?」

「そ。でも、この店がどうこうなる訳でもないんだけどね。一番はこの子達が幸せに寿命を全うしてくれることが大事だから」

「そうですね」

 燐はそう答えるしかなかった。これ以上、首をツッコむと余計な事になりかねないとそう感じたからだ。

 そして今、あの時もう少し深く聞き出せておけばこのような事にならなかったのではないか燐は自責の念に駆られていた。

 一方、長四郎は絢巡査長から事件の説明を受けていた。

「被害者はこのカフェの店長の猫谷好江さん。34歳。死因は後頭部を打ちつけたことによる脳挫傷です」

 長四郎は話を聞きながら、好江の周辺を観察する。

「突き飛ばされた感じだね」ありのままの感想を言う長四郎。

「そうですね。一応、強盗の線を視野に今、レジのお金が盗まれていないか確認しています」

「そ。でも、どうして俺たちに連絡してきたの?」

「応援要請を受けて臨場して、防犯カメラの映像をチェックしてたら長さん達の姿が映っていたんで」

「そういう事ね」一人納得する長四郎。

「あの、猫にご飯を上げたいんですけど!!」

 そう言いながら、刑事と押し問答する女性が居た。

「ダメです! 鑑識作業が終わっていませんから」

「決まった時間にご飯を上げないと!」

「ダメなものはダメです!」

 そんな会話をしているのを見かねた絢巡査長が「このカフェの店員さんですか?」と女性に質問した。

「はい。横乃海 翡翠(よこのうみ ひすい)と言います」

「横乃海さんですね」確かに店員名簿にあった名前だったので「どうぞ」と許可した。

「ありがとうございます!」

 翡翠は礼を言い、すぐさまケージに居る猫達にご飯をあげていく。

「ねぇ、絢ちゃん」

「何ですか?」

「バックヤードって、防犯カメラはないの?」

「あることはあるみたいなんですけど・・・・・・」

「みたいなんですけど?」

「ここの防犯カメラは最後に出て行った人が録画ボタンを押して、録画開始されるようになっているんです」ご飯を食べる猫達を観察する翡翠が真っ先に答えた。

「という事は、ここに店員さんが居ない時はバックヤードの映像はないということですか?」

「そうです」

「成程。じゃあ、目撃者はここに居る猫達ってことか」

「そうなりますね」

 絢巡査長は長四郎の言葉に賛同すると共に、犯人を見つけ出すことがより困難を極めるなとも思うのであった。

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