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異人-13

 長四郎と燐はビルの最上階にあるテナントへと来ていた。

「ねぇ、ここって何?」燐は長四郎に耳打ちし、質問する。

「ここは何って? 教えてあげて」

 長四郎は目の前に座っている外国人の男性に説明を求める。

「ここは、外国人専門の探偵事務所。あ、申し遅れたね。僕の名前は、リチャード・ドウスカ。宜しく」

 リチャードは燐に握手の手を差し出すので、燐はリチャードと握手を交わす。

「あの、外国人専門っていうのはどういう意味ですか?」

 燐は握手する手を引っ込めながら質問した。

「そうだね。依頼もまちまちだから何とも言えないんだけど、外国からの依頼を主に受けているかな」

「外国から」

「そ、要は行方不明の外国人が日本に来ていないかとか、不倫旅行で日本に訪れている外国人の調査をしているわけ。分かった?」

「はい」としか答える事ができない燐。

「それで、頼んでいたことだけど」

「ああ、キャサリンの事か。彼女が帰ってくるのは1か月後だからな」

「マジか。まぁ、分かっている事まで話してくれ」

「それは構わないが、彼女は良いのか?」

 リチャードは心配そうに燐を見ながら長四郎に尋ねる。

「ラモちゃんの事ね。こいつは大丈夫。勝手に人に付いて来ているだけだから」

 燐は無言のまま長四郎の脇腹に肘内を叩き込む。

「ぐぼっ!」机に突っ伏す長四郎を他所に燐はニコニコ笑顔で「話を続けてください」と言うので、顔を引きつらせながらリチャードは話始めた。

「道前の捜索依頼を受けたのは、キャサリンだ。彼女は道前が豊島にある会社に勤めている事を調べあげ、それと同時に、道前がアメリカを国外脱出する手引きをしたのが杉田である事を突き止めたんだ。だが、そこからキャサリンの周りに怪しい人物がちらほらと見え隠れするようになった」

「その怪しい人物の正体って、分かっているんですか?」

 燐の問いにリチャードは黙って頷き、話を続ける。

「8933の中村商会の人間だろう」

「8993?」燐は意味が分からず、首を傾げる。

「ヤ」とリチャードが言いかけた時、「そこから先は言わなくて良いから。それでキャサリンを国外に逃がしたわけか」それまで黙っていた長四郎が口を開いた。

「その通りだよ。だから、彼には関わらない方が良いと思う」

「ふーん、8933とは関わりたくないからな」

「取り敢えず、キャサリンを逃がして向こうの出方を見ている所だけど」

「特に動きはない。って、事は軽い警告か」

「だから、キャサリンに帰ってきてもらう手筈を整えたんだ」

「でも、帰国は1か月後ですよね?」

「それはバカンス休暇だよ。彼女にも家族は居るから、親孝行させなきゃ」

「はぁ」

「分かった。ありがとう。気を付けるよ」

 長四郎はリチャードに礼を言い椅子から立ち上がると、リチャードの事務所を後にしようとする。

「あ、待ってよ!」燐も後に続こうとし、入口の前で急に足を止める長四郎にぶつかる。

「痛っ!」

「最後にもう一つだけ。キャサリンはさ、道前の職場を見つけてたの?」

「どうだろうな。ミシェルはなんて言っているんだい?」

「豊島周辺という情報だけは手に入れていたみたい。そんで、俺の所に」

「成程。多分、見つけていたんじゃないかな。でも、彼女には伝えなかったというのが僕の考えだ」

「そうか。ありがとう。お礼はまた今度な」

 おでこに手を当て悶絶する燐を置いて、長四郎はリチャードの事務所を出ていった。

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