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結成-17

 それから、3日経った。


 燐のいじめはピタッと止んだのだが終始、白い眼を向けられてはいた。


 長四郎から「この3日は大人しく過ごせ」との命令を受け鳴りを潜めていた燐に「放課後、武道館の屋上に来るように」とクラスメイトからの言付けを受けた。


 燐はホームルームが終わって直ぐに屋上へ向かった。


 階段を駆け上がり、屋上に上がるとそこには誰もいなかった。


「んだよ。誰も居ないじゃん」

 燐はそう言いながら例の血痕が残っているのか確認したその時、シャッター音が屋上に響き渡る。


「君だったか。岡田っちを殺したのは」


 スマホを燐に向けながら青山が近づいてくる。


「この写真、警察に渡して欲しくなかったらさ、言うこと聞きな」

 緑山が冷徹な口調で燐に話しかける。


「それよりさ、その血痕消した方があんたの為だと思うよ」

 黄山が燐に雑巾を投げつける。


「こんなので、落ちるわけないでしょう」

 燐は冷静に対応する。


「じゃあ、この写真は警察にということで」


「何でそうなるのよ」

 黄山の荒唐無稽な発言に、燐は反論する。


「でも、君は用もないのに屋上に上がって何してたの?

どう見ても、その血痕を消すためだろ」


 青山はドヤ顔で自分の推理を披露する。

「はぁ~今の話、聞いた?」


 溜息交じりで彼ら三人の後ろに立つ長四郎,一川警部に声を掛ける燐。


「聞いた。聞いた」長四郎は呆れた感じの返事をする。


「あんたら!?」

 緑山がうろたえて見せる。


「今のは十分な脅迫だからね。

おっと、馴染みの刑事に頼ろうとしても無理やけん」


 一川警部の言葉に青山の顔が曇る。


「刑事さん、知っていますか?

この羅猛さん、赤山君を殺してるんですよ」


 青山は話を逸らそうとする。


「それは君だろ。青山君」

 長四郎はストレートに名指しする。


「な、何を証拠に?」


「そうだよ」と緑山は青山の意見に賛同する。


「冤罪、冤罪」黄山は長四郎に嚙みつく。


「君達、これに見覚えない?」



 一川警部がバックから「生徒会の掟」が書かれたノートを出して三人に見せる。


 顔が凍りつくというのはこのようなことを言うのかと青山,黄山,緑山の顔から伺えた。


「なんでそれを・・・・・・・」

 口をあんぐりさせながら青山は一川警部に質問する。


「家宅捜索したの。そしたら、面白いもんでねぇ~

君の部屋から赤山君の血痕が発見されてたと」


「そうなの?」

 緑山が青山に事実確認をする。


「噓だ。そんな事があったら僕の所に両親から連絡が来る!!」


「ああ、お母様は打ちひしがれいたけど。

お父様はああ遂にかぁ~って感じでしたよね。一川さん」


「そうやったね。今、警視庁で取り調べを受けているから」


「血痕があったからって、僕が犯人とは限りませんよね。

父さんが赤山を殺したのかも」


「うわぁ~往生際が悪い」

 燐は軽蔑の目を青山に向ける。


「そう、なんで赤山君の紛失した所持品の中の一つがスマホだって知っているの?

君の僕の子達が君からそう聞いたって言ってたよ」と長四郎。


「そんな言い分を鵜吞みにするんですか?」

 緑山が反撃に打って出る。


「残念だが、彼女が、言いふらしているってウラも取れてるとよ」

 一川警部は、黄山を指す。


「わ、私は青山にそう言えって言われたから・・・・・・・」


「おい!!!」青山は黄山を恫喝する。


「仲間割れかよ」燐はボソッと呟く。


「まぁ、ここじゃあなんだから場所を移そう」


 長四郎がそう言うと同時に、一川警部は手を鳴らして合図をすると下から男性刑事が五人程上がってきて、青山,黄山,緑山を警視庁へ連行するのだった。


 警視庁の中会議室に移動した六人は、事件の目撃者海部リリも参加し屋上の話の続きを

 始める。


「さぁ、先程の続きをしましょうか」


「その前に、これは逮捕ということですか?」

 青山は長四郎の話を遮るような形で、青山が自分の状況を確認する。


「いや、絶賛発行中なので安心して待ってといて」


 一川警部が説明をすると、緑山,黄山は泣き始めた。


「あの泣かれても何も始まらないから。今回の事件について、話させて貰います」


 長四郎はそう宣言し自分の推理という名の妄想を話し始める。


「まず、岡田槙太君の事件は自殺ではなく他殺です。

その根拠は、赤山君を殺害した犯人と岡田君を屋上から突き落とした犯人が同一人物だから」


「そんなのは根拠とは言わない!」青山が反論する。


「最後まで聞けって。

そこで泣いている二人は、岡田君の死因について知っているんじゃないのかな?」

 長四郎は青山を宥め、緑山,黄山に問う。


 しかし、泣きじゃくるばかりで答えない二人、先が進まないので話を続ける長四郎。


「まぁ、赤山君の殺害動機は、犯人とって都合の悪い物を持っているから。

その都合の悪い物っていうのが」


「スマホ」燐が呟く。


「Exactly!! 正解だ!!!」

 長四郎はクイズ番組の司会者の如く、燐の呟きに反応する。


「そのスマホはどこにあるっていうんですか?」


 声を震わせながら青山はスマホの所在を尋ねる。


「それはね、青山君。君の通学カバンから発見されたばい。

赤山君のご両親から確認は取れて今、データ解析中」


 一川警部が淡々と説明をする。


「勝手にカバンを開けたのですか?

そんな泥棒まがいの事をするんですか?」


「いや、令状を取って行っているからご安心を」

 一川警部はウインクする。


「凶器。凶器は見つかったんですか!!

凶器もないのに人は殺せませんし、そこから僕に辿り着く証拠が無ければ赤山を殺した事にもならない!!!」


 息絶え絶えになりながら青山は身の潔白を訴える。


「君の部屋から赤山君の血痕が発見されたってのにか?家政婦さんが言っていたよ。

事件以降、君が自室を使っていないって。

血痕があることを知っていてたからじゃないの?」青山は黙秘する。


「あんた、もう言い逃れできないよ。

こいつが、岡田を屋上から突き落としました」


 緑山が自白すると青山は崩れ落ち床に頭をつける。


「それはホントね?」

 一川警部が隣でまだ泣いている黄山に確認すると頷き、「青山っちが、落としました」とか細い声で話す。


「最後の最後で、仲間に売られちまったけど、どうする?」


「ぷっ!! はははははははっはははは」

 突如、高笑いする青山にその場にいる全員が驚きのあまり固まってしまう。


「ど、どうした? 急に気でもおかしくなかったか?」


「おかしいのはあなた方ですよ。

僕には警察関係者が味方に付いているんです。

あなた方がどんなに証拠を上げても意味はないんです」


「この場でそう言える君に感心するわ」

 呆れるのを通り越して、感心する長四郎。


「菅刑事は今ね、上の監察官室でこってり搾り上げられているはずだから。

意味ないっておじさんが教えておきます」


「そんなはったり、意味ないですよ」強気な姿勢の青山。


 青山の前に口座の入金履歴が記載された紙が投げつけられる。


「これは、菅刑事の口座入金履歴。

そんで、君の父上名義でこの口座に500万振り込まれているったい」


「・・・・・・・・・・」

 一川警部の説明に青山は反論しない。


「つまりは賄賂だ。

この500万は、連続自殺が発生している4年間。

欠かさず振り込まれている。意味分かるよね?」


「あ~賄賂っ!!!」

 海部リリが手を叩き合点がいったと言わんばかりの表情を浮かべる。


「まぁ、4年前だと君は高校生じゃないけどお兄さんが通っていたから、接点がないという言い訳は通じないよ。さぁ、どうする?」

 観念したのか青山は項垂れ大号泣し始めた。


「結局、私達はこの場に居る必要あるの?」


 燐はリリと顔を見合わせる。


「いる。いる」

 長四郎は適当に返事をする。


「私達、何でも話しますから」

 緑山は項垂れ今にも倒れそうな黄山を抱きしめ、燐達を追っ払ってくれと言わんばかりの顔で長四郎を見る。


「じゃあ、聞かせて?」


「はい・・・・・・」

 緑山は事件当夜について話し始める。


 深夜、芸春高等学校に通う男子高校生、岡田 槙太を校内にある三階建ての武道館に呼び出した。


 そこから青山,赤山,黄山,緑山の四人は「生徒会の掟」に沿って今までのいじめの原因が自分達にあると暴露した。


 怒りに身を任せた岡田は青山を殴りつけようとしたが、青山に返り討ちに遭い口を切りその血液が例の血痕となった。


 赤山はテンションが上がり、この一部始終を残そうとスマホで撮影する。


 岡田の戦意を失わせ、屋上の縁に立たせる。


 四人は後ろで岡田をまくし立てていた。


「ジャンプ!! ジャンプ!!」赤山はスマホで撮影を続ける。


「早くしてぇ~」緑山は気だるそうに飛び降りるよう促す。


「Let’sバンジー!!」黄山は腕を思いっきり挙げてはしゃぐ。


 槙太の腰には紐は付けておらず、飛び降りたら大けがで済まない事は容易に付くのに彼らはそんな事は毛頭にもない様子で終始、岡田を煽り続ける。


 岡田は恐怖、悔しさ、腹立たしさ等が入り混ざり大粒の涙を流す。


「もうっ、じれったいなぁ~」


そう言うと青山は槙太の背後に立ち脅かしてやろうという安易な考えで膝かっくんをすると、バランスを崩した槙太はそのまま落下した。


 その場に、今まで聞いたことのない不快な音が響き渡る。


「あ、落ちちゃった」

青山はにやけながら後ろに居る連中を見る。


「落ちちゃった。じゃねぇ~よ!」気にせず動画を取り続ける赤山。


「でも、面白くない?」黒山は、悪びれる様子もない。


「あんなに簡単に落ちるんだね。人って」冷酷な目で縁の方へ黄山は目を向ける。


「ダメ、俺。ツボに入ったかも」


青山のその一言にその場に居る全員が大爆笑する。


 そこから人に見つからないよう学校を抜け出し、後は警察に任せるといった具合の予定だった。


 リリに目撃されかつ燐が長四郎を頼ったことで歯車は狂ったとのことだ。


「ごめんなさい・・・・・・」

 ここで謝意を示す緑山。


「俺達に謝られてもなぁ~それより、赤山君の殺害に至った話が聞きたい。

脅迫でもされてたと見たな」


 青山に自分の推察が合っているか確認すると、青山は静かに頷く。


「あいつ・・・・・ 動画を切り取ってネットに流すっていうから」

 青山は、小さな声で自白し始めた。


 事件当夜金の授受の為、青山邸を訪れた赤山。


 赤山は青山の自室に通され、ネットで購入したサバイバルナイフで一突きし、殺害した。


「死体の遺棄を手伝ったのは誰?」


 長四郎の質問に「菅さん」とだけ答える青山。


「じゃあ、詳しい話は明日という事にするけん。

じゃあ、留置場へ行きましょうか」


 パンっ、パンっと手を叩くと、捜査員が入って来て青山らを留置場へ移送する。


「それと海部さんには動画の音声の確認をしてもらいたいから、もう少しお付き合いください」


 一川警部がリリに依頼すると二つ返事で了承の旨が伝えられた。


「付き添っても良い?」

 一川警部に許可を得る燐。


「ええよ。長さんはどうすると?」


「帰ります。お疲れ様でした」

 燐,リリ,一川警部に一礼して警視庁を後にする。

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