結成-15
青山はここ3日程、神経が張り詰めている状態が続いていた。
その日もまた、心ここにあらずといった感じで窓の外を眺める。
「青山、青山」
その言葉に我に返る青山が声の方を向くと、緑山が心配そうに青山を見つめる。
「大丈夫? 顔色悪いけどなんかあった?」
「いや、何でもない」
「でもさ、ここ最近、心ここに非ずって感じじゃん」
黄山が指摘する。
「そうか」
「そう」
緑山と黄山が声を揃えて言う。
「なぁ、岡田の事件なんだけどさ」
「何を急に」
突然、岡田槙太の件を話始めたので気味悪がる緑山。
「あんたのパパが警察を動かして揉み消してくれるんでしょ。
安心なんでしょ」
黄山がお菓子を頬張りながら、青山を諭す。
「そうだったんけどさ・・・・・・
お前ら葬式にハゲ刑事来ていたろ」
「あ~ そうだっけ」
黄山は必死に思い出そうとする。
「居たかもだけど、どうして?」
別に殺人で死んだ生徒の葬儀に刑事が来るのは不思議なことではないといった感じの緑山。
「それがさ」
青山は葬式の際に、一川警部が呟いていたことを二人に話す。
「そんな事がね・・・・・・・」
緑山も一川警部の言葉が自分達に向けられている事を理解する。
「それって、当てつけじゃない。
岡田っちが落ちたのって、青山が足カックンしたからで」
黄山の軽い発言に鬼の形相で睨む緑山と青山。
「あんたは、余計なことを言うな」
緑山がしっ責すると自分の発言が如何に迂闊であったかを自覚し小声で「ごめん」と謝る。
「それで、どうするの?」
緑山はこれからどう振舞うかを青山に尋ねる。
「まぁ、屋上の血痕は消すしかないだろう」
「でも、それってリスキーじゃない?」
黄山が恐る恐る発言する。
「だから、替え玉を使うんだよ。
お前、俺達の事探っているあいつを利用するんだよ」
青山は不敵な笑みを浮かべる。
長四郎と一川警部は、青山宅にお邪魔していた。
両親は不在であったが家政婦さんが忙しい中、両親に連絡してくれ立ち入りを許可された。
青山宅は豪邸で、広いリビングに通される二人。
「どうぞ、こちらでお待ちください」
ソファーに腰掛けるよう指示し自分の仕事に戻っていった。
「長さん、派手に行かんようにね」
「はい」
長四郎は立ち上がり家の中を散策し始める。
俺が最初に行うのは、家政婦の現在地を確認することだ。
今、家政婦さんは一階の和室を掃除していた。
序盤で見つかるようなことがあってはならない。
目的が遂行できないからだ。
取り敢えず、二階の部屋から攻めることにした。
二階に上がってすぐ近くの部屋から調査を調べようと入るとラッキーなことに対象の青山君のお部屋であった。
子供部屋なのに18畳と広い部屋で、金持ちの書斎といった感じの部屋を呈していた。
「いやぁ、高校生には勿体ない部屋やな」
感心しながら、部屋を観察し始める。
まず、本棚から手を付ける。
漫画,小説,参考書と言った部類でそれぞれに本棚が分けられていた。
その中で漫画の棚に不自然に置かれているのを発見し、手に取りノートを開くと1ページ目に「生徒会の掟」と書かれていた。
次ページを見るといじめの手口が書いてあった。
1.所有物を紛失させる。
2.奪った所有物を破壊,落書きをして返却。
3.教師に相談は4へ 相談しない場合は5へ
4.クラス全員を丸め込み教師にそのような事実はないと報告。
裏切者が発生した場合、裏切者も同様の目にあわして潰す。
落ち着いた頃合いで、5に
5.教師に相談がない場合、次のステージへ
万引き,痴漢等の噂を流して広める。
6.クラスメイトや部活動等で、追い詰める。
7.追い詰められた際に種を明かし、自殺するように促す。
舞台を用意して見届ける。終了
そして、次ページからは金剛 彩,川東 太一,西谷 笑,岡田 槙太のいじめの内容が個別に事細かに書かれていた。
長四郎はそれを写真に残していく。
次々と書かれている内容を読んでいると、どんどん胸糞悪い気分になってくる。
金剛 彩,西谷 笑は女性の尊厳を踏みにじられる行為を受けていたり、川東 太一,岡田槙太は焼印を入れられていたりとこれ以外にも凄惨な事を受けていたようであった。
だが、これらを実行するのは生徒会の人間ではない。
あらぬ噂を耳にしかつ、それを信じた生徒達であった。
悪いことをした奴には何をしても良いという正義感溢れる生徒達が4人を自殺まで追い込んだ。
これらのことを主導しているのは生徒会のメンバーであることは、このノートから読み取れた。
ノートを元の場所に戻した長四郎は、部屋を見回すと不自然に轢かれている風呂場用のマットがあった。
恐る恐るめくろうとすると背後から「何してるんですか!?」と家政婦が声を上げる。
「あ、いやぁ~
トイレを探していたら迷っちゃって」
「それでこの部屋を散策ですか?」
長四郎に疑いの目を向ける家政婦。
「あ、それに今日日の高校生の部屋を見たくってですね・・・・・・
あ、ははっははははははははははっ!!」
愛想笑いでごまかす長四郎。
「警察って泥棒まがいのことするんですね」
「泥棒まがいって。
あのここに轢いてあるマットって・・・・・・」
「ああ、私もよく分からないんです。
触るなって言われてますし。
息子さんもここ最近、別の部屋で寝ているみたいで」
「どうして分かるんですか?」
「普段は、ベットメイキングも私の仕事なんですが、そのマットが轢かれてからというもの寝たような痕跡も無いんで、そのままなんです」
「寝たかどうか分かるとはプロ中のプロですね」
「それほどでも」謙遜する家政婦。
「その他に変わったことは?」
「ああ、そう言えばそのマットの近くで血液みたいなのを拭きましたけど」
「え? それ、ホントですか!?」
「はい」
「それって何で拭きました?」
「雑巾ですけど。もしかして、何か事件の証拠ですか?」
「それは調べてみないと分かりません。
ちゃんと令状を取って来るので、その雑巾取って頂けますか?」
「分かりました!!!」
家政婦は敬礼をし、長四郎の依頼を了承する。
長四郎は、ノリが良い家政婦で良かったと心の底から思うのであった。