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結成-13

 長四郎と一川警部は、一川警部行きつけの定食屋・湖南で昼食を取りながら捜査会議をしていた。


「長さんの見解はどう?」

 焼き魚定食の魚の骨を綺麗に取りながら質問する一川警部。


「見解というのは?」


「いや、赤山君の事件と繋がりがあるのか。

長さんの考えを聞かせてほしいと」


「そうですね。繋がりあるんじゃないですか」


「やっぱり、そう思う?」

 そう言いながら、一川警部は魚に醬油をかける。


「はい。金が抜き取られているのは強盗に見せかける為のカモフラージュだと。

じゃなきゃ、正確に胸を一突きで殺せたりしませんよ。

被害者に争ったような痕はありませんでしたし」


「そうね。よほどの手練れしかできない芸当やし。

仮に初めての強盗だとして、人殺したりするのはハードな事やけんね」


「ですよね。だから、あの学校の関係者じゃないかと」


「流石、長さん」


「いえ」

 一川警部に褒められ照れる長四郎の前に、注文していた丼が勢い良くドンっと置かれる。


「あんたら、ここは飯屋なんだよ! 人殺しの話なんかするんじゃねぇよ!」


 恰幅の良い、笑顔だと福を呼びそうな顔の女性店員が二人に注意する。


 しかし、店内に居る客は長四郎と一川警部の二人だけであった。


「すいません」

 二人は声を合わせて謝る。


「ったく。気をつけろよ」

 女性店員は二人にそう言いつけると、自分の定位置に戻って行った。


「いやぁ~怖い姉ちゃんやね」


 一川警部の小声で言ったはずの言葉が耳に入ったのか。


 こちらをギロっと睨む。


「あ、ご飯のお代わり下さい~」

 誤魔化すような笑顔でお代わりを頼む一川警部。


 一川警部が使っていた茶碗を黙って厨房に持って行く。


「あの話の続きは、車中でしましょう。一川さん」

「そうしよう」


一川警部が賛成すると、女性店員が「はい、お代わりのご飯です」と山盛りのご飯を置いて戻って行く。


 すると、長四郎のスマホに燐から写真付きのメッセージが来る。


 「至急、来られたし」の一文と共に、青山が金銭の授受をしている写真が添えられていた。


「どうします? 一川さん」

 長四郎はメッセージの内容及び写真を一川警部に見せる。


「急ぐばい」

 慌てて昼飯をかき込んだ二人は、私立芸春高等学校へと向かった。


 学校に着くと授業をサボった燐が出迎えに来た。


「遅い!」


「すいません」

 二人揃って燐に謝る。


「いや、授業さぼっているお前に言われたかないわ!」

 長四郎は燐にツッコむ。


「あ、バレてた?」


「バレてたじゃねぇよ」


「で、至急という事やったけど何があったと?」


「いや、そう言えば、早く来るかなと思って」


 燐にその一言でガクッと肩を落とす一川警部と長四郎。


「それでこの写真について説明願おうか」と長四郎。


 長四郎と燐は、場所を学食に移して燐と情報を共有させる。


「成程、この校内に犯人が・・・・・・」


 頷きながら長四郎の推理に納得する燐。


「そちらは、全校集会の演説でサクラを用意していたと」

 長四郎も頷きながら、燐の報告内容に渋い顔を浮かべる。


「何でそんな顔になるのよ。ちゃんとした成果でしょ」


「成果? どこがだよ。単なるいちゃもんじゃねぇか」


「いちゃもんって」


「そうだろう。香典集めるために演説でサクラを使っちゃいけない道理はないだろ」


「でも、事件の直前まで会っていたって言うし」


「それだけじゃあ犯人とは言えない。

警察は強盗殺人で追っているから、彼と別れた後に事件に巻き込まれたとかなるはずだろうな」


「じゃあ、私が聞きだしたのは意味がなかったって言いたいの?」


「うん」

 満面の笑みで返答する長四郎。


「ねぇ、それよりあのハゲ刑事は?」


「ハゲ刑事は、別件で校内うろついているから気にするな。

てか、一川さんのことハゲ刑事って呼ぶのな」


「だって、事実なんだから」


「ははっ! 酷い奴だな」と言いつつ、長四郎もまた10年前は同級生の前で「ハゲ刑事に呼ばれちゃってさ」と言ってたのはここだけの話。


「もう休み時間か。行こう」


 スマホの時計を見て、燐を連れて行こうとする長四郎。


「どこに?」

「青山君のと・こ・ろ」


「気持ち悪い」

 燐は辛辣な言葉をストレートに浴びせるのだった。

 

「で、僕に何の用ですか?

通夜の準備で忙しんですけど」


 生徒会室に突如として現れた長四郎と燐に不快の意を現しながら用件を尋ねる。


「この子が、全校集会の時に君が被害者と事件の直前まで会っていたと言っていたと聞いてね。早い話、アリバイ確認」


「そうですか。警察って報連相がなってないんですね。

僕は、今朝家を訪ねてきた刑事さんにお話しましたけどね」


「ほう」長四郎は顎に手を当て頷く。


「ほうって。僕、これから彼の通夜に行かないといけないので」


 数十万円のお金の入った香典袋をバックにしまい部屋を出ようとする。


「結構、集まったんだな。香典。

サクラを使って集めるとは大したタマだ」


 長四郎の言葉にピタッと立ち止まる青山。


「どう意味です?」

 青山は振り返り、鬼の様な形相で長四郎を見る。


「サクラを使っていたんだって?

まぁ、法に触れていないし大丈夫だから気にしないで。

君がそのお金をちょろまかして、自分の物にしたら話は別だけど」


「そんなことしません!!」


「そう、かっかするなよ。ほら、女子高生からもなんか言って」


 長四郎は燐に意見を求める。


「人殺しの言う事は信用できん!!」


「そうじゃないだろ」

 長四郎は心の中で、余計な事を言いやがってと思う。


「いい加減にしてください!!」

 青山は怒鳴り上げる。


 驚きのあまり長四郎と燐は思わず抱き合う。


「僕を犯人扱いしていることがよく分かりました。

この事は、父に報告させて頂きます。失礼します」


 青山は長四郎と燐に言い放つと生徒会室に出て、赤山の通夜に向かった。


「おっかねぇ~」と長四郎。


「うんうん。って、離れなさいよ! 痴漢!!!」


 燐は勢い良く長四郎を突き飛ばす。


「グゲッ!!!」

 長四郎の身体は華麗に宙を舞い、地面に叩きつけられる。


「スケベ」

燐は顔を赤らめモジモジしながら照れる。


「はぁ~」

 そんな燐を見て長四郎は、深いため息をつくのだった。

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