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帰国-9

「成程、それで今は黙秘ターンに入ったっていうわけか」

 長四郎は今、勇仁と共に命捜班の部屋で習子の取り調べ結果の報告を受けていた。

「ねぇ、そっちの感触はどうだったの?」燐は長四郎達の成果を聞く。

「俺達の方は、どうだった? 勇仁」

「そうだな。息子の良器が首謀者って感じはなかったな。寧ろ、あいつが怪しかったよな。長さん」

「そうだな」

「おい、コラ。自分達だけで話を盛り上げるな」

 燐は長四郎の後頭部を叩き、ツッコミを入れる。

「その怪しい人物って誰なんですか?」絢巡査長の質問に「ラモちゃんをナンパした奇特な奴」とだけ答える長四郎。

「蒼間 育哉の事やね」一川警部はそう言うとコーヒーを飲む。

「なんで、そいつが怪しいと思ったわけ?」燐はその根拠を問いただす。

「それは・・・・・・・・」

「秘密」勇仁が長四郎の代わりに答えた。

「お爺様、真面目にやってください!!」燐のしっ責に勇仁は臆することなく続ける。

「秘密は秘密だから。それに今日はもう遅いし、帰ろうか」

「遅いって。まだ7時じゃないですか」

「いや、7時って言うけど19時だからね。良い子はお家で勉強している時間よ」

「それは屁理屈です!!」

「ラモちゃん、お爺様の言う事は聞いといた方が良いよ」ここで長四郎が勇仁のフォローをする。

「あんたまで、そんなこと言うわけ!」

「言うね」長四郎は燐の目を真っ直ぐに見て発言した。

「もういい。帰る」

 燐は踵を返し、部屋を出て行った。

「じゃ、また明日」勇仁は部屋に残る三人にそう告げ、燐の後を追いかけた。

「で、長さん。これからどげんするとよ?」

「一川さん、絢ちゃんには、14年前の事件について詳しく調べて欲しいんです。

示談に持ち込んだ後の事まで」

 一川警部の質問にそう答えた長四郎は話を続ける。

「ラモちゃんと共に行動するのであれば、注意して欲しいことがあるんです」

「注意して欲しい事?」絢巡査長が気になった部分を復唱する。

「そう。ラモちゃんの前では、必ず良器が今回の事件の犯人であると思わせるようにして」

「理由も無しに、はい、分かりました。と了承出来ません」

 絢巡査長はマジトーンで長四郎の発言に食いつく。

「絢ちゃん、今回の事件をよう考えんね。蒼間刑事部長が我々に依頼したのは親類縁者の蒼間 育哉の無実の証明。しかも、今回の事件が起きてからの依頼でしょ」

「一川さんの言いたいことは息子の良器を貶める為の依頼なので、敢えてその術中にはまるという事ですか?」

 長四郎は指をパチンと鳴らし「That’s Right. 冴えてるね~絢ちゃん」と言って、ウインクする。

「でも、ラモちゃんに内緒にする事はあるんでしょうか?」

「あるよ。大いにあるよ。だって、ラモちゃんは犯人だと決めつけたら、疑い続けるし。それに正直だから、態度で相手にバレちゃうよ」補足を入れる長四郎。

「確かにそうですね」

 こればかりは、絢巡査長も否定できなかった。

「そういう事だから、明日からその路線で宜しく」

「分かりました」

「長さんは勇仁さんとどげんすると?」

「俺達は、良器をこちら側に取り込もうかなと」

 それから解散となり、明日からの捜査に備えて三人は身体を休めるのであった。

 翌日、長四郎は勇仁の家を訪れた。

 屋敷のインターホンを鳴らすと、寝ぐせをつけたパジャマ姿の勇仁が姿を現した。

「おはようございます。お爺様」長四郎は燐の真似をしながら挨拶すると「あ、おはよう」と欠伸をしながら挨拶を返す勇仁。

「ま、入って。入って」その言葉を受け長四郎は屋敷の中に入る。

「今、起きたところだから。少し待っててね」

 勇仁は風呂場へと向かい、長四郎はリビングのソファーに腰掛けテレビのスイッチを入れる。

 テレビのワイドショーでは、金衛門の事件のニュースが流れていた。

 逮捕された習子の動機について報道されていたのだが、賀美一族に復讐する為に人生を捧げた女性としてまるで美談のように語られていた。

「はぁ~」

 あまりにも見てられないようだったので、テレビの電源を切ったタイミングでバスローブ姿の勇仁が入ってきた。

「やっぱり、美談系に仕立て挙げられてんの?」

「その通り。全く敵は策士というか、なんというか・・・・・・」

「策士ねぇ~」勇仁は冷蔵庫から紙パックのオレンジジュースを取り出し、そのまま口をつけ飲む。

「そういや、ラモちゃんの姿が見えないけど、どうしたの?」

「燐は一川警部と捜査するって息巻いて朝一で出て行った」

「作戦成功といった所か」

「そろそろ、資料が届くころなんだけどな」

 勇仁が時計を見てそう言った時、チャイムが鳴った。

「俺が行く」

 長四郎は玄関に向かい出ると、郵便局員が速達の封筒を持って来たのでサインして受け取り、リビングに戻った。

 宛名を見ると夫人からであった。

 長四郎は事件に繋がる資料だと踏み、勇仁に断りを入れる前に開けて中身を確認する。

「どんな感じ?」

 勇仁と長四郎は互いの頭をくっつけあいながら、送られてきた資料に目を通す。

「習子ちゃんの言う通り、タイで拳銃の扱い方のレクチャーを受けていたのは事実みたいだな」

「ああ」長四郎は相槌を打ちながらページをめくる。

 次のページには、蒼間と見知らぬ男が写っている写真が添付されていた。

「こいつを突いたら面白いもの出そうだな」

「奇遇だな。俺も同じ事考えていた」

 長四郎と勇仁は、ハイタッチを決め行動を開始した。


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