結成-11
青山が生徒会室の戸を開けると、生徒会のメンバー赤山,緑山が刑事と思われる男性二人から事情聴取を受けていた。
「あ、君が生徒会長の青山君?」
明るいトーンで話し掛ける一川警部。
「はい。そうですけど」
1「実は、岡田君の事件について二、三お話が聞きたいと思って。
こちらに伺わさせて頂きました」」
「はぁ」
青山は一川警部の軽い感じを見て、このアホ刑事は美味く丸めこれると思う。
「槙太の事件って、あれ自殺ですよね」
「まぁ、そうなんやけど。あの刑事がねぇ~」
一川警部が厄介者を見るかのような目で、長四郎を指す。
「どういう意味ですか? 一川警部」
長四郎は冷たい視線を向け、一川警部に釘を刺した。
「あ、これは失礼しました」
今、長四郎と一川警部の二人は本庁勤務の若きエリート刑事と所轄署の冴えない中年刑事といった立ち回りで事情聴取を行っていた。
「私が言うのもなんですが、席についてお話を聞かせて下さい」
「はい、分かりました」
長四郎から漂うただモノではない雰囲気を悟り青山は、長四郎の言葉に素直に従う。
「あの、僕達はもう良いでしょうか?」
口を紡ぐっていた赤山が長四郎に許可を求める。
「どうぞ」
「あ、失礼します。行こう」
赤山は緑山を部屋から連れ出す。
黄山は、青山からのアイコンタクトで二人に付き添うように指示を受けて共に部屋を出る。
「で、僕にお話というのは?」
席に着くや否や刑事二人に、青山は用件を尋ねる。
「実は、タレコミが合ってね。
生徒の中で岡田君が犯罪を犯したというあらぬ噂が流れていると」
「あらぬ噂、ですか・・・・・・・」
タレコんだのはあの女子生徒か、いや、あの感じは只のゴシップ好きな感じもする。
タレコんだ奴は別にいるのか。
そのようなことを頭の中で張り巡らせる青山。
「その情報元が生徒会だという事までは分かっているんだ。
今日はその事実確認に来た次第です」
「と言っても、タレコミの情報が100%正しいとは思っとらんけん。
安心して」
一川警部が補足で説明する。
「じゃあ、はっきり言います。
僕達が槙太の名誉を傷つける事はしません」
きっぱり断言する青山を他所に長四郎は興味がなさそうにスマホを操作していた。
「聞いていますか!! 刑事さん!!!」
青山は、長四郎を怒鳴りつける。
「なんで、そんな感情的になるの?」
長四郎のその一言に拍子抜けする青山。
「貴方が、僕達にあらぬ疑いをかけるからですよ」
「ふ~ん。岡田君の名誉とか言う割には自分達の保身を大事にするんだね」
「なっ!?」
「まぁまぁ、ごめんなさい。
職業病なところもあってね。相手を疑ってかかることしかできんと」
「そんな言い方はないでしょう」
「言いすぎました。すいません」
長四郎に頭を下げる一川警部。
「あまり言いたくはないですが僕達、生徒会は生徒の代表なんです。
その代表が生徒の危害を加えるなんて事はしません!!」
「そう」冷たい相槌を打つ長四郎。
「そうって。このことは、父を介して警視庁に抗議させて頂きます」
父というのは、あのPTA会長の事だろうと思う長四郎。
「あ、それだけは・・・・・・・」
一気に顔が青ざめる一川警部を他所に長四郎は続ける。
「どうぞ、ご勝手に。
最後に、私達は今回の事件と過去三件に起きた事件を他殺事件として捜査しています。
これからも、こちらにお話を聞かせてもらうかもしれません。
その時は宜しくお願い致します」
長四郎は自分の非礼を詫びず、何だったら事件の捜査の協力要請を請う始末。
呆れて何も言えなくなる青山。
だがそれと同時に、何故か両手の震えを感じる。
「行きましょう。一川警部」
「はい」
一川警部はそう返事し、長四郎が出て行ったのを確認し直ぐに青山の方へ踵を返し話し掛ける。
「先程は、失礼いたしました。お詫び申し上げます」
「いえ」
「あの、事件の事なんですけど」
「はぁ」
「あの刑事が勝手に他殺事件や言うとるんで気にせんといてください。
後、私は貴方達の味方ですけん。そこんとこ宜しくですぅ~」
「分かりました」
「では」
部屋を出る前に、一川警部は青山の手先が震えているのを見ると何も言わずそっと戸を閉めた。
青山一人が聴取を受けている時、先に生徒会室を出た三人の生徒会メンバーは屋上で事件について話し込んでいた。
「あんたら、何を聞かれたの?」
黄山は赤山、緑山に長四郎達から受けた聴取の内容を聞く。
「俺達が槙太の噂を流してるのかって。な?」
緑山に確認する赤山。
「うん」緑山は頷いて、事実であることを伝える。
「余計なこと言ってないでしょうね」
「言うわけないでしょ。それより、キィちゃんのこと嗅ぎまわって奴はどうだったの?」
逆に緑山は、黄山に燐の件について尋ねる。
「そいつも槙太の噂を聞いてきた。
でも、訳わかんないの。嗅ぎまわる理由が、生徒会に入りたいからだって」
「何、そいつ。馬鹿じゃないの」赤山は嘲笑しながら言う。
「ホント。ホント」緑山もまた笑ってみせる。
「そんなことは良いの。他に聞かれたことは?」
「う~ん」
赤山,緑山の両名は変わった質問がなかったか再度、頭を働かせる。
すると、「あっ」と緑山が先に思い出した。
「何?」すかさず聞く黄山。
「生徒会名簿見せろって言われた」
「見せたの?」
「うん。見られても別にまずいものがあるわけじゃないでしょ」
「見られたらまずいもの」
黄山,緑山に聞こえないくらいの声でそう呟く赤山。
「ま、そうね。それに青山っちが、何とかしてるでしょう」
「ねぇ、小腹好かない?おやつ食べようよ。キィちゃん」
緑山はそう言いながら、お腹を擦る。
「赤山、あんたも行く?」
「ああ、行く」
黄山に声をかけられて、何か考え事をしていた赤山は我に返り咄嗟に返事をする。
そんな赤山を見て少し違和感を覚える黄山だった。
そして、三人は学食に併設されている売店へ向かった。