逆さの坂
坂にもいろいろある。
この世とあの世の境目に、黄泉の国へと通ずるという黄泉比良坂という坂もある・・・
どこへ続くのか、
坂を登れば下り坂。
坂を下れば上り坂。
どこまで続くのか、
何処まで行っても上り坂。
何処まで行っても下り坂。
様々な坂がある。
まさか。
私は一人。他界した恋人のことを思っていた。
ふと恋人のような人影を見つけた。私はその人影に吸い寄せられるように後を追いかけた。
死んだはずの恋人の姿を追いかけていたら、この坂道に辿りついた。
逆さの坂。さかさのさかさ。上下。前後左右。縦横高さ。坂を歩いていると不思議な感覚と眩暈とともに何処かへ通じた。
亡くなったはずの恋人が生きているではないか。
「一緒に帰ろう」
「私もかえりたい」
私は来た坂を恋人と一緒に歩く。
不思議な感覚と眩暈。どこへ続くのか。
「あれって三途の川っぽいよね。まずいよ。帰らないとぉぉぉ!」
二人して三途の川に辿りついてしまったようだ・・・