告白
「はっ……ハアッ? 何言っているんだよ? いっ……今、せせせせせせせっ……セックスとか言わなかったか?」
それとも俺が変態過ぎて別のワードを聞き間違えたか?
「アハハハっ! 武っチ! キョドり過ぎてオモロ!」
流麗は気安く俺の肩をパンパンと叩いて笑った。
「で、武っチ、ゴムある?」
「……履いてきたスニーカーの靴底ならゴム製だけど」
「アハハっ! ナニソレ! 武っチマジウケル!」
俺は真面目に答えたつもりだが何か変な事言ったか?
「まぁいっか……初めての場合、妊娠しづらいんだっけな? アレ都市伝説だったけな? 排卵日とか安全日とか計算して無いけどゴム無しでへーきかなぁ?」
「ちょっ……一寸待って流麗!」
俺はクサナギソードが期待で膨れ上がる事を理性で必死に抑え付けた。
「君は誰に対してもこんな事しているのかい?」
俺の無神経な質問は良い雰囲気をぶち壊しにした。
「そんな訳ないじゃ! 今初めてって言ったばっかりじゃん! ムカつく! あーしが如何にもヤリマンに見えるって事?」
正直に言えばそうにしか見えないが、ここで角を立たせるのは賢いとは言えない。
「いや、そんな事無いけど、突然そんな事言われたから驚いてさ。傷付けてたらゴメン」
「別にぃ……そういう目で見られるのは慣れているからイチイチ気にして無いけどね」
「とっ……とにかく、自分の事大事にしようよ」
「ありがと。優しいんだね。でも、武っチならマジでセックスして良いと思ったよ」
アカン。
クサナギソードが俺の中心で叫びたがっている。
「いやいや、流麗って自分でレズビアンだってカミングアウトしてたじゃないか? 空手をやっていたって言う憧れのお姉さんの事が好きだったんじゃないの?」
「あ、ソレ麗衣ちゃんの事だから」
「え? そうだったんだ」
空手って言うから別の女性かと思っていたが、そう言えばアイツはキックを始める以前はフルコンタクト空手をやっていたんだよな。
子供の頃から麗衣の事を知る流麗にとって、キックボクサーとしての麗衣としてよりも、空手のお姉さんとしての麗衣のイメージの方が強かったのかも知れない。
「勿論、麗衣ちゃんは今でも大好きだけど……考えてみたら恋愛感情とはちょこーっと違うのかなって気付いてさぁ……」
「それって憧れみたいなもの?」
「そーそー! 多分強くて美人でカッコイイ麗衣ちゃんに対する憧れだったと思う。で、武っチと最近ずっと一緒に居て、あーし気付いたんだ」
流麗はそう言いながら俺の両手を握り、真っすぐ俺の瞳を見た。
「私、武っチの事好きだよ?」
「え?」
「だから、私と付き合ってください」
これは夢か幻か?
俺は生まれて始めて告白された。




