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イリュージョンライト~伝説覚醒~ヤンキー女子高生の下僕は〇〇になりました  作者: 麗玲
第2章 ヤンキー女子高生の下僕はNEO麗のメンバーにさせられました
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勝利後の助っ人達

「やったぁー! 武っチゲキツヨじゃん!」


 足振をKOした俺に、流麗が両腕を一杯に広げて抱き着いてくると、柔らかい二つの球体が俺の胸に押し付けられた。


 汗混じりのシャンプーの匂いが俺の鼻腔をくすぐり、クサナギソードが起立するのを何とか理性で押さえつけようと、別の事を考えようとした。


「まだ朝来名を倒すまで油断出来ないよ!」


「いや、朝来名ならとっくに倒されてるし……というか、火受美のおねーさん、マジでモンスターってカンジ?」


 流麗の指す方向に視線を向けると、環先輩が舌をだらりと垂らした朝来名の髪を引っ張りながら、ズルズルと引きずると、亮磨先輩と澪の前に放り投げた。


「こっからケジメをつけるのはアンタらの得意分野だろ? じゃあ、後は任せるわ」


 環先輩はヒラヒラと手を振ると、校門の方に向かい足早に去ろうとしたので、慌てて俺は声を掛けた。


「え? もう帰るんですか?」


「ああ。火受美の為に助けてやったけど、私は美夜受の仲間じゃねーし、大嫌いだからな。決着はついたみたいだし、こんな場所はもう用は無い」


 そう答えながらも足を止めようともせずに立ち去ろうとする環先輩に「待てよ! 環!」と麗衣が声を掛けると、環先輩は足を止めて麗衣に振り返った。


「私はお前に用は無いんだけど?」


「そうかい。でも助っ人に来てくれてありがとな。スゲー心強かったぜ」


 麗衣が率直に礼を述べると、「はあっ」と小さく溜息を吐いて、再び校門の方に歩き出した。


「別にお前の為じゃねーよ」


「そんな事解ってるよ。でも、感謝してるぜ」


 だが、今度は環先輩は振り返る事無く校門から外に出て行き、暫くすると彼女の愛車であるバルカン400と思われるバイクのエンジン音が鳴り響き、その音がこの場から遠のいて行った。



 ◇



「全く……環の奴。私を呼んでおきながら礼も言わずに一人で帰るなんてね」


 音夢先輩はヤレヤレと首を振りながらそう言った。


「その……助けに来てくれてありがとうございます。正直助かりました」


「いやいや。礼は要らないよ。喧嘩自体は好きじゃないけれど、君や火明さん、それに周佐さんの実力もよく見させて貰ったからね……」


 そう言いながら、音夢先輩は俺に抱き着いている流麗と目を合わせると、口元を吊り上げた。


「特に火明さんは喧嘩したり男子を誘惑したりする体力を持て余している位だから、メニューはもっときつくしても良いかな? と思ってね♪」


 男子を誘惑するのも体力が必要なのか分からんが、それはともかく、音夢先輩はかつて実力を隠すために練習で手を抜いていた流麗に対して、あまり良い印象を抱いていなかったようだ。


「うへぇ……勘弁してください」


 流麗は慌てて俺から離れると若干蒼褪めた表情をしていた。


「それにしても小碓君のさっきのパンチ……凄い威力だったけど諸刃の剣だね」


 足振をKOした左フックについて音夢先輩は話して来た。


「ええ。教えてくれた人から多用は厳禁って言われましたし、相手を仕留める時にだけ使う様に言われました」


 初めてパンチミットで受けた時、腕が抜けそうな衝撃を受けたパンチだ。(第44話)


 ブラッドさんに教わった左フックの打ち方は実に単純明快だ。


 通常、前足を内側に捻るだけだが、打つ時に足を内側に入れる。


 たったこれだけの事でより強力な左フックを打てるが、打った直後に隙が出来てしまうので、特に試合などでは何度も相手に見せられないパンチであった。


「だが、使い様によっては劣勢から逆転したり強力な武器になり得るね。ボクシングで使うのは正直止めた方が良いと思うけど、至近距離からパンチをヒットさせる機会が限られてくるキックや総合では使い道がありそうだよね」


 ボクサーである音夢先輩としては使って欲しくない様だが、自分の好き嫌いだけではなく、他の格闘技とも比較して冷静に分析していた。


 そんな格闘家らしい会話をしている横で、場違いなイチャイチャオーラが放たれていた。


「やったよぉ~私達の勝ちだよ! 美鈴ちゃん!」


 玖珠薇は美鈴先生に抱き着くと、顔にキスを始めた。


「ちょっ……一寸! 玖珠薇さん! 皆観てるし! 離して!」


 美鈴先生は顔を真っ赤にして玖珠薇から離れようとするけど、長身の美鈴先生の豊かな胸元で幸せそうに頬ずりする玖珠薇は離れそうもない。


 そういや、玖珠薇が半グレから助け出された時、美鈴先生に告白してキスしていたよな……。


 あれ以来、玖珠薇が美鈴先生に腕組みをしたりしているところをよく見かけるようになったので、もしかして、二人は付き合っているのか?


 俺がそんな事を考えているのが表情に出ていたのか?


 俺と目が合った美鈴先生は慌てて言い出した。


「わっ……私達は小碓君が思っている様な間柄じゃありません!」


「え~あたし達付き合っている様なもんジャン♪」


「付き合っていません!」


「もぉ~美鈴ちゃんったら。あたし達って公認の仲だから今更照れなくていいのにぃ~」


「ウソおっ! 公認って……皆知ってるの?」


 美鈴先生が驚愕の表情を浮かべると、手を叩いて玖珠薇は笑い出した。


「きゃははっ! ジョーダンに決まってるジャン! キョドってる美鈴ちゃんの顔チョーカワイイ!」


 結局のところ、この二人は付き合ってるのか付き合っているのだろうか?


 仮に付き合っていたとしても、この場では美鈴先生は否定するだろうからこれ以上詮索しても真実は明かされないだろう。


 ならば、いと尊き百合という事で納得してしまおう。


 お二人ともお幸せに。


「だからあっ! 小碓君の考えている様な仲ではありません!」


 またしても心を読まれた。


 この先生はエスパーなのか?

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